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令和4年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業

経済産業省では、令和4年度に実施した委託調査事業として『令和4年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(再生可能エネルギーの固定価格買取制度等における賦課金単価算定の精緻化向けた分析等調査)調査』を実施しており、同報告書が2023年10月6日に公開されています。

本報告書では、FIT・FIP認定設備の各種デ ー タを分析・整理、FIT制度の賦課金における現行制度の検証・対策方向性の検討など行われており、太陽光発電を含む再エネ発電設備のFIT後の事業予定についてのアンケート調査も実施されています。

今回のトピックでは、太陽光発電設のFIT終了後に関するアンケートを中心に、報告書の概要を紹介します。

調査の背景と目的

2012年より導入された再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)は、電気事業者の買取りを通じて賦課金という形で全ての電気使用者から回収されています。
賦課金の単価は再生可能エネルギーを巡る状況が変遷する中で、より一層の精緻化が求められており、現行制度の検証や方向性の検討が必要となっています。

本調査は、再エネ措法に基づく再エネ発電設備の認定状況等から、事業者へのヒアリング等や関連する制度の動向等を踏まえ、今後の再エネ発電設備の導入量等の分析・予測方法の検討、賦課金の単価算定に必要となるデータ等の整理、及び現行制度の検証と対策の方向性の検討を目的として実施されています。

再エネ発電設備の導入量・導入時期の分析、予測(第1項)

再エネ発電設備の導入量・導入時期について、稼働済設備については「FIT制度費用負担調整機関保有データ」及び「FIT設備認定データ」を用いて集計されており、未稼働案件については「アンケート調査結果」を用いて集計・分析が実施されています。

(引用元:経済産業省

調査結果によれば、FITによる太陽光発電設備の2023年度末導入量は“68,844MW”と推計されています関連トピック

FIP制度活用予定事業者における発電設備に関する分析、予測(第4項)

運転開始済のFIT発電設備を対象に、FIT終了後の発電事業に係るアンケート調査が大規模に実施されています。

(引用元:経済産業省

FITによる太陽光発電に関してはFIP移行に関しての質問に加え、FIT(FIP)終了後の事業予定や事業継続のための要件などがアンケートとして収集されています。

(引用元:経済産業省
FIT・FIP支援終了後の事業継続・終了予定

FIT期間終了後も72%の事業者が発電事業の継続を考えている一方で、そのうちの約4割(全体の約30%)の事業者は発電所のリプレース(パネル交換等の設備更新)を検討しているとあります。

(引用元:経済産業省

また出力規模が大きい程、FIT後の事業継続意思が低くなっている傾向が見られます。

(引用元:経済産業省

これら結果から、太陽光パネルの廃棄が2030年代半ばから一定の規模で始まることが示唆されます。

FIT・FIP支援終了後の廃棄理由

FIT終了後の廃棄理由として「土地の賃貸終了」が58%、「事業性が確保できない」が40%となっています。

(引用元:経済産業省

規模が大きい発電所ほどその傾向は強く、事業継続に向けては地域との関係性を検討する必要性が示唆されます。

FIT・FIP支援終了後の運営に必要な情報

FIT終了後の事業方針を検討するために役立つ情報については、「卒FIT電気を買取可能な事業者に関する情報」や蓄電設備に関する情報が多く挙げられています。

(引用元:経済産業省
太陽光発電所のパネルの貼り替えニーズ

故障・出力低下等に伴うパネルの貼り替えニーズは、出力規模の大きい太陽光発電設備ほど高くなっています。

(引用元:経済産業省

背景の詳細は不明ですが、規模の大きい発電所ほどパネル交換の経済的メリットが大きく、FIT終了後のリプレースの意思が高いこととも同じ要因があると想定されます。

現行制度の検証及び今後の政策の方向性の検討(第7項)

FIT終了後の発電事業に関するヒアリング結果が、事業全般および個別論点(課題)として整理されており、発電事業の継続策の方向性が提示されています。

(引用元:経済業省

FIT終了後も多くの事業者は発電事業の継続意思があるものの、制約(土地賃貸期間)や将来の事業性やリスクを判断するための情報(売電先など)が不足していることが課題となっています。
情報公開や一元化、大規模事業者への発電事業集約、制約条件の緩和やインセンティブなど、事業継続に向けた政策が必要だとされています。

まとめ

将来の太陽光パネルの大量廃棄の懸念から、国や自治体では各種議論やリサイクルシステム構築に向けた取組みが進められています。一方で議論の前提となる導入量やFIT後の事業継続意向など、前提となる条件の推計が遅れています。

今回の調査結果から、FIT終了後においても一斉に太陽光パネルの廃棄が始まる訳ではないものの、一定量の廃棄やピークが発生する可能性も示唆されています。またFIT終了後の発電事業継続の支障となる制約条件や継続に向けた必要な情報がある程度明確になったと考えられます。

FIT後の事業継続を促すために必要なインセンティブ・規制や、排出量推計の時間的・地域的な特徴の明確化など、議論の前提となるための更なる精緻な調査が求められます。

参考資料