(公開日:2025-6-27)
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、『太陽光発電主力電源化推進技術開発』が2020~2024年度の5年間で実施されており、2024年度の成果報告会の発表スライドが公表されています。
太陽光パネルリサイクルに関わる項目として、『太陽電池モジュールの低温熱分解法によるリサイクル技術開発』『リサイクル動向の調査』が発表されており、公開されている概要を整理・紹介していきます。
(関連トピック:2023年度成果報告会)
2012年以降のFIT制度により太陽光発電導入量は急増したことで、普及後の社会を支える戦略が必要となっており、導入拡大に伴う安全性や廃棄物等の懸念も指摘されています。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、長期安定的な主力電源として再生可能エネルギーが位置付けられており、太陽光発電の更なる導入が必要となる一方で大量導入に向けた課題に取り組む必要性も指摘されています。
NEDOでは大量導入社会に向けた現状分析、課題抽出、課題解決の方策を検討し、今後の技術開発の指針として『太陽光発電開発戦略2020(NEDO PV Challenges 2020)』が策定され、開発戦略を実現するために5年間でプロジェクトが遂行されています。
また本プロジェクトは、過去2014年から実施されてきた技術開発の後継且つ包括的な事業として位置づけられている様です。
太陽光パネルのリサイクルに関しては、リサイクル技術開発や動向調査が行われています。
2014年から実施されてきた技術開発プロジェクトは『太陽光発電開発戦略2025』に引継がれ(関連トピック)、太陽光パネルのリサイクルに関しても資源循環を目指したリサイクルシステムの開発が行われることになっています(関連トピック)。
本事業では、太陽電池マテリアルリサイクル要素技術開発として、『分離処理コスト3円/W以下、資源回収率80%以上』の分離技術の開発が行われました。
熱分解の処理速度として15枚/hrを達成し、熱分解処理されたガラスを原料とする板ガラスの製品化に成功したと報告されています(関連トピック)。
トクヤマが開発したリサイクル技術『低温熱分解法』は、触媒を担持したセラミックフィルターの作用により、太陽光パネルの樹脂(バックシートやEVAなど)を比較的低温で分解できることが特徴とされています。
一度の処理でガラスやセルが分離でき、分解された樹脂は熱分解炉を加熱するために用いられ熱回収が行われます。
合わせて工程全体の自動化やシステムの安定稼働の実証など、今後の実運用に向けた取組みも行われています。
分離回収されたガラスは板ガラスへの原料としての適合性が確認が行われ、これまで課題が多いと考えられていたフロートガラスへの水平リサイクルの実証試験に成功したと報告されています。
また、災害等で想定される破損した太陽光パネルのリサイクルや、これまでリサイクルが難しいとされていたセル(シリコン)のリサイクルについても、実証が進められています。
本テーマでは、太陽電池モジュールのリサイクルの動向、ガラスの再利用状況、および使用済太陽光発電設備の排出量予測の精緻化の3項目が報告されています。
本項では、太陽電池モジュールのリサイクルに関わる国内の技術開発や政策の動向、実施事例等の調査結果がまとめられています。
※運営者注記:本内容に関するさらに詳細な情報は、当WEBサイトおよび市場分析レポートでご覧いただけます
「ガラスのマテリアルフロー情報の更新」、「ガラスリサイクル技術」および「ガラスの受入条件」の調査が行われ、本報告会では「ガラスからのアンチモン除去技術について適用可能性」が紹介されています。
本検討では、アンチモン(Sb)のハロゲン化揮発(※)の研究結果が報告されており、高温・高濃度(1200℃、100%N2)の窒素雰囲気下で糖類・CaCl2水溶液を添加することにより、75~90%のSb揮発率を確認したとされています。
熱力学的平衡状態の数値計算(FactSage)のシミュレーションとも整合した結果が得られており、アンチモンの揮発には「CaCl2、有機物、N2濃度100%」の条件が揃う必要性が推察されています。
また今後の技術的課題として、アンチモン揮発現象の深掘りやガラス粉砕・加熱工程の低エネルギー化、実際の運用における異物混入や評価方法などが整理されています。
また「太陽電池モジュールのガラスの再利用の状況調査」として、グラスウール原料のガラスカレット受入れ基準が紹介されています。
※ハロゲン化揮発は、塩素や臭素などのハロゲン元素との反応を用いて、ガラス製品中 Pb, As, Sbを除去する方法。
太陽光パネル中の元素に対するハロゲン化揮発の適用に関しては、過去に京都大学による研究結果も報告されている。
本項では、使用済太陽光パネルの排出量に関して最新の導入目標と過積載を考慮(※)した予測結果が報告されています。
(注:環境省および過去のNEDOによる排出量推計)
過積載を考慮した場合、2036年に22万トン~34万トンが推計されており、過積載率を考慮しない場合と比較して約20%程度排出量が増加する結果が報告されています。
※過積載の影響に関しては、過去に当WEBサイトのコラムでも紹介しています。
本テーマでは、太陽電池モジュールのリサイクルに関する海外の動向として、欧米やその他主要国におけるリサイクル事業者や研究開発プロジェクト、政策動向などが報告されています。
主要国で、太陽電池モジュールのリサイクルに取組む事業者の一例として、以下の企業が報告されています。
フランス | Envie 2E Aquitaine、ROSI Solar |
ドイツ | Reiling PV-Recycling、First Solar |
イタリア | Tialpi、9-tech、EcoWeTech |
スペイン | Solar Recycling、Reciclajes Pozo Cañada SL、FCC ÁMBITO S.A、La Hormiga Verde、Medenasa |
米国 | Electronics Recyclers International、FabTech Solar Solutions、First Solar METech Recycling、Okon Recycling、OnePlanet Solar Recycling、Ontility Revive PV、SOLARCYCLE、Solar Panel Recycling.com、We Recycle Solar |
韓国 | Won Kwang S&T、Yoonjin Tech、Chungbuk Technopark、Seokchung Korea、JRC |
中国 | JinkoSolar、Yingli Energy、RESOLAR EnergyTechnology、State Power Investment Group Changzhou Ruisai Environmental Technology、Fachmann IntelligentTechnology Jereh EnvironmentalTechnology、Ycergy Technology |
豪州 | PV Industries、Elecsome、Sircel Solar、Solar Renew、Solar Recovery Corporation Pan Pacific Recycling、Lotus Energy Recycling |
結晶シリコン系太陽電池モジュールのリサイクル技術の動向がまとめられています。
これまでガラス分離技術に主眼が置かれていたものが、2020年代にシリコンや銀などの金属回収技術の研究開発に軸足が移っているとされています。
また、代替技術として光パルス照射や新共晶溶媒を用いたリサイクル技術など、国内の太陽光パネルのリサイクルでは取り扱われていない技術なども紹介されています。
高効率・低コスト化が期待され国内外で研究開発が進むペロブスカイト太陽電池に関して、海外でのリサイクルに向けた研究開発の事例が紹介されています。
国内ではNEDOが2025年度からペロブスカイト太陽電池のリサイクル技術開発に取組みの開始を予定していますが(関連トピック)、本資料でも日本の技術開発により世界を先導していくことが期待されています。
NEDOが2020年度~2024年度に実施している技術開発プロジェクトのうち、2024年度の成果報告として発表資料が公開されています。
今回の発表資料では、低温熱分解技術やアンチモン除去技術、海外のリサイクル動向などの新しい情報が発表されています。
今後、最終的な成果報告が公開されると思われますが、改めて技術開発プロジェクトの概要を紹介していきます。