環境省は、令和7年度に実施した委託事業『令和7年度使用済再生可能エネルギー発電設備のリサイクル等の推進に係る調査・検討業務報告書』を公開しています。
本調査は令和3年度から継続して実施されており、令和7年度も使用済太陽光パネルの廃棄・リサイクルの実態に関するアンケート調査や最新の動向の整理、各種課題に関する検討等が報告されています。
本トピックでは、新たに取り上げられた調査のポイントや、これまでのトレンドを整理した内容も含めて紹介します。
※過去の報告書に関するトピックはこちらから ⇒ 令和3年度、令和4年度、令和5年度、令和6年度
2012年のFIT制度導入以降、太陽光発電を中心に再エネの導入が拡大しており、政府は「第7次エネルギー基本計画」においても2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光発電を主力電源として最大限導入する方向性が示されています。一方で、災害や故障等によって一部で太陽光パネルの排出も始まっており、2030年代後半に排出のピークが想定されています。
こうした状況を受け、リサイクル推進に向けた政府の合同会議が開催されており、リサイクルを義務付ける新しい制度案のほか、既存制度や財政支援等の議論が行われています(※2026年5月11日時点で、リサイクルを義務付ける法案が国会審議中)。
本調査業務では、太陽電池モジュールのリサイクル等の推進に向けた議論・検討が深められるように、リユース・リサイクルの普及促進に関する調査および検討が行われています。
なお過去にも同様の調査が実施されていますが、検討会での議論や最新の情勢を踏まえ、新たな調査・検討内容や一部に変更が見られます。
本調査業務では太陽光パネルの排出・廃棄の実態調査が行われており、最新の報告書でも解体・撤去業者を対象とした「排出実態調査」、産業廃棄物中間処理業者・リユース業者への「処理実態調査」、および最終処分業者への「埋立実態調査」の3種類のアンケート調査が実施されています。
排出実態調査では、令和5年度調査と同様に公益社団法人全国解体工事業団体連合会の加盟企業を対象にWebアンケートが実施され、99社から有効回答が得られています。

回答した99社のうち42社が、過去に太陽電池モジュールの解体・撤去実績があると回答しており、半数弱の解体業者が既に排出に関与していることが分かります。

解体・撤去工事の依頼元および取外し事由は「個人等の発電事業者の家屋解体に伴う撤去」が最も多く、過去の調査結果と同様の傾向が見られます。
住宅メーカー経由の依頼の詳細は不明ですが、個人住宅の可能性を考慮すると、現状では個人の家屋からの排出件数が多いことが示唆されます。また、太陽電池モジュールの付け替え(リプレイス)件数が、前年度までのアンケート結果と比べ増加傾向にあります。

排出依頼元および取外し事由について、令和4年度からの推移を下図に示します。
過去年度ではアンケートの有効回答数は異なるものの、個人住宅からの使用済太陽電池モジュールの排出件数は増加傾向にあります。
また、令和7年度は法人等の発電事業者からの排出件数が急増しています。
依頼元と排出事由のクロス分析結果がないため仮説にとどまりますが、発電事業者のリプレイス増加の可能性が示唆されます。

解体・撤去工事の今後の受託方針について、「受託予定」と回答した事業者は全体の約80%で、前年度調査より約12ポイント増加しています。
太陽光パネルのリサイクルへの関心の高まりを背景に情報周知が進んだのか、あるいは事業機会と捉え積極的に取り組む意識が高まったのか、増加の背景についての深掘りが求められます。

その他にも以下のアンケートが実施されています。
2030年代半ば以降の大量排出への関心は高まっているものの、現状では個人の住宅などからの『少量・多数』への施策が必要であることが示唆されます。
一方で、産業用・事業用パネルの廃棄が流入し始めた重要な転換点にある可能性もあり、解体・撤去の件数だけでなく『量』に着目した調査も求められます。
前年度同様、太陽電池モジュールの受入れを行う中間処理業者およびリユース事業者を対象に、リユース・リサイクル量やフローの実態、事業上の課題に関するアンケート調査が実施されています。
令和7年度調査では計108社(前年度は102社)を対象にアンケート調査票が送付され、51社(47.2%)から回答が得られています。

アンケート結果に基づき排出要因別および回収後のマテリアルフローが整理されており、回収量は5,046トン(パネル換算で25.5万枚)となっています。
排出要因としては「不良品:19.9%(前年度:37.3%)」、「災害等起因:10.5%(前年度:18.5%)」と、前年度から低下しています。一方で、「新古品:21.0%(前年度:16.8%)」や「目的終了:34.6%(前年度:12.6%)」など、リユースとして活用できる可能性が高いものも5割超となっています。
回収された太陽電池モジュールのうち、リユースが1,015トン(20.1%)、中間処理(リサイクル)が4,021トン(79.7%)、そのうち359トン(7.1%)が最終処分となっています。
令和7年度のアンケート調査結果では、使用済太陽光パネルの処理状況として「リユースが2割、中間処理(リサイクル)が約7割、最終処分は約7%」となります。

前年度までのアンケート結果から排出量の推移を整理すると、2021年度から増加傾向が見られます。
回答企業が半数に留まっているため推察の域は出ませんが、排出量の増加している可能性が示唆されます。

排出要因の推移を整理したものが下図になります。

2021年度からリユースが急減しており、災害起因の排出も減少しています(アンケート回答者の偏りの影響の可能性もあるが)。
減少要因は不明ですが、太陽光発電設備のガイドライン等による改善効果の可能性があるのか、興味深い結果となっています。
また、2024年度は『新古品』や『目的終了』といった排出要因が増加しており、単年の結果か中期的なトレンドかについて、今後の施策に向けての深掘りが必要だと考えられます。
令和7年度調査でも、太陽電池モジュールのリサイクルにおける課題についての自由回答の形式で行われており、「金銭面(費用面)」、「制度面」、「情報面」で意見が得られています。
回答内容の多くは前年度調査と類似しており、リサイクル制度の議論が進む中でも、事業者(排出業者、処理業者)の課題解決は依然として道半ばと言えます。
最終処分(埋立処分)に関する実態調査も実施されており、令和6年度のアンケート調査を実施した35社に加えて一定の埋立容量基準を満たす管理型最終処分場を有する事業者を対象に、以下の調査が行われています。

アンケートに回答した32社のうち、5社(15.6%)が実際に受入れを実施したと回答されています。
埋立に対応可能な事業者は、今後受入れ予定の事業者を含めても2割弱と留まっており、受入れを拒否する理由として「有害物質の溶出」や「含有物質が不明」などの懸念が引き続き挙げられています。

前年度までの受入れ実績および受入れ方針の推移を整理したものを下図に示します。
受入れ可能とする事業者は全体の2割弱で推移しており、多くの最終処分場で受入れが拒否されている状況となっています。

『現状ではコスト差により埋立が選択されている』とい見方が、太陽光パネルリサイクルの議論の中で既成事実のように語られるケースが見受けられますが、アンケートの結果からは異なる側面も示唆されます。
仮に埋立処分が実際に選択されているとすれば、『限られた処分場に持ち込むため高い収集運搬コストを負担』や『処分場が太陽光パネルと認識せず埋立』などの可能性も考えられ、実態の深掘りが求められます。
本章では、前年度より実施してきた排出量推計を踏襲しつつ、複数の導入量シナリオや排出要因ケースを設定し、年度別の排出量の推計とその推計値に基づく管理型最終処分場の残余年数への影響評価が行われています。
また、都道府県別の導入量目標を基に将来の導入量試算および排出量推計を行い、地域ブロック単位で排出ピークの年代や今後の排出量増減のトレンドが示されています。
環境省/経済産業省の合同会議等で示されている『2040年代前半に最大で約50万トン/年程度』が現時点で代表的な排出量推計ですが(関連トピック)、最新の導入実態や導入量目標を踏まえた排出量の推計も、随時アップデートすることが重要とされています。
本検討では、環境省/資源エネルギー庁との議論も踏まえ、排出量推計の精緻化に向けて将来にわたる複数の導入量シナリオが設定されています。
現時点では具体的な推計値は公開されていませんが、最新の推計値を試算するための前提条件の更新に向けた検討を進められたものとされています。

上記の排出推計ケースを用いて、管理型最終処分場の残余年数への影響が評価されています。
管理型処分場全体を対象とした試算では、2030年度における太陽電池モジュール由来の最終処分量が最終処分量全体に占める割合は最大約2%にとどまり、残余年数の前倒しは生じないとされています。

一方で、アンケート調査の結果では、太陽電池モジュールの受入れが可能な処分場は限られており、処分場を限定した試算では残余年数が5~7年前倒しされる結果が示されています。
これらの結果から、最終処分場の地理偏在やリサイクル率向上など、制度的措置の重要性が示唆されています。

地域別の排出量推計として、各都道府県の導入実績と導入量目標が調査・整理されています(下図は調査結果をチャート化したもの)。
これらの結果に基づき、全国7ブロックでの年度別排出量推計やトレンド分析が行われており、排出ピークに向けて処理能力の確保や収集運搬網の整備といった処理体制の確保が必要だとされています。

本章では、太陽電池モジュールのリユース・リサイクルの普及促進に関する各種調査やシミュレーション、及びそれらの結果に基づく政策課題の検討などが整理されています。
3Rの原則からリユースパネルの活用が求められるものの、これまでの議論では価格優位性や品質・性能の保証、制度上のインセンティブの欠如などが課題として指摘されてきました。一方で、リユースパネルの使用は廃棄物削減に加え、温室効果ガス削減効果も期待されることから、こうした環境影響の削減効果について評価が行われています。
本検討では、太陽光発電所における複数のライフサイクルを想定し、ライフサイクル全体での二酸化炭素排出量と発電代替による二酸化炭素削減量が試算されています。

ライフサイクル全体でのCO2排出量は、運用の違いによって最大約27倍の差が生じると試算されており、リユース品の活用による環境負荷削減効果が示されています。
ただし、発電代替による二酸化炭素削減量については異なる概念であるため、各パターン間の優劣を単純に比較できるものではない点に留意が必要とも指摘されています。
過去の報告書の多くは、リサイクルガラスの用途やリサイクルガラス(カレット)の受入れ品質など、主に技術可能性に関する調査が中心でいした。
今年度の調査では、ガラスのリサイクル先の用途(板ガラス・グラスウール・ガラス発泡剤・路盤材・ガラス砂など)を対象に、再生品ごとの需要量やガラスの排出・リサイクル動向、さらに太陽電池モジュール由来ガラスの排出見通しを踏まえ、全体のマテリアルバランスを前提にした推計が行われています。その結果、2024 年以降は供給量が需要量を上回る傾向が続くことから、リサイクルの受け皿が不足する状況が予測されており、受け皿の拡大とリサイクル高度化が必要であると指摘されています。

なお、当WEBサイトでは国内のガラス産業全体のマテリアルバランスの観点からの課題を整理しています(関連トピック)。
報告書でも指摘されているリサイクルの高度化に加えて、既存のガラス産業・製品に依存しない創造的なリサイクル手法の開発が求められます。
本報告書の第5章では、太陽光発電設備のリサイクル制度構築に向けて開催された「中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ 合同会議」の概要が紹介されています。
(合同会議各回の概要に関するトピックはこちらから ⇒ 第1回~第9回、第10回)。
また第6章では、その他再エネ設備として風力発電設備の適正処理・リサイクル等の推進に関する調査結果が報告されています。
今回紹介した『令和7年度使用済再生可能エネルギー発電設備のリサイクル等の推進に係る調査・検討業務』報告書では、前年度からの継続調査に加え、最終処分場への影響、排出量推計の精緻化に向けた検討やガラスのマテリアルバランスから検討された課題など、今後の調査・検討の方向性も含めて整理されています。
排出量推計からは最終処分場全体への影響は限定的とされる一方で、地理的偏在の影響への考慮が必要であり、地域ブロックごとの導入状況の違いを踏まえた施策の必要性が指摘されています。また、リユースによる環境負荷削減効果が認められるものの、これまでの実証事業の結果を踏まえ、制度設計と連動した実証の必要性も提案されています。
太陽光パネルのリサイクル法案の制度化や再資源化事業等高度化法の運用が始まる中、リサイクルの実態調査と将来予測の精緻化に加え、国内産業の資源循環の観点も踏まえた継続的な調査が求められます。