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環境省:再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会(第5回)開催

環境省と経済産業省は『再生エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会』の第5回を2023年8月9日に開催しました。

第5回検討会では、これまでのヒアリング内容や指摘されたコメントを、その中でも特に制度化が必要だと指摘されていた「太陽光パネルの含有物質の情報提供」の方向性などが議論されています。

(前回までの検討会に関してはこちらから ⇒ 第1回第2回第3回第4回

検討会開催の背景と目的(再掲)

2050年のカーボンニュートラル実現やエネルギー安全保障、輸入に頼る資源の問題などを背景に再生可能エネルギーの重要性が高まっており、再生可能エネルギーの持続的な導入には地域との共生が不可欠となっています。
一方で2012年に開始したFIT制度による太陽光発電の急速な普及により、地域との葛藤や将来の廃棄・リサイクルなど多くの課題も浮き彫りになっています。

これまで経済産業省・環境省では廃棄・リサイクルの課題について検討会関連トピックやワーキンググループ関連トピックが開催されています。
本検討会ではこれまでの議論の内容を踏まえ、太陽光パネルの大量廃棄に対する対策としてリサイクル技術、資源循環、法制度の専門家などの議論や業界団体や自治体などからのヒアリングを通じて、具体的なリサイクル促進策をまとめる予定となっています。

ヒアリングや議論における意見と今後の論点

各種業界団体や事業者、自治体からのヒアリング通じて得られた説明内容や委員のコメントなどが整理されており、今後の検討を深めていくために以下の三つの項目に関する各々の論点が提示されています。

(1)大量廃棄に向けた計画的な対応
(2)適切な事業廃止及び廃棄処理に関する対応
(3)資源循環に向けた取組

計画的な対応を進める上で、あるべき将来像や不適切な廃棄物処理に伴う具体的なリスクのイメージ、排出量予測や処理コスト、リサイクルや処分施設の実態把握などの重要性が挙げられており、ライフサイクル全体に渡る取り組みが不可欠であると指摘されています。

事業廃止を円滑かつ適正に進めるために、切れ目のない制度やルール化が必要であり、特に廃棄時に必要となる太陽光パネルの含有物質情報のデータベース化にも言及されています。

経済合理性のあるリサイクルチェーンの実現には、市場に即した制度設計や許認可制度が必要であるものの、リサイクルを一つの成長産業と捉える視点が重要と指摘されています。
また太陽光パネルのカバーガラスにアンチモンが含まれており、リサイクル技術や活用方法、安全性の評価の考え方の整理が必要だとされています。

太陽光パネルの含有物質の情報提供に関する方向性の検討

今回の検討会で多くの委員や事業者などからも整備の必要性が指摘されていた「太陽光パネルの含有物質の情報提供」について、これまでの議論の整理とデータベース化に向けた方向性が提示されています。

廃棄・リサイクルを行う関連事業者にとって有用とされる情報として、以下4つに分類されています。

  • 共通事項:メーカー名、製造期間、鉛・カドミウム・ヒ素・セレンの4物質の含有情報
  • 最終処分業者:含有物質の溶出試験結果
  • 板ガラスメーカー:アンチモン等のガラスの組成情報
  • リサイクル事業者:有価金属の含有量

廃棄時に処理事業者等への廃棄物情報の提供ができなくなる事態を防ぎつつも、個別に調査・分析をすることによる過度な社会コストや関係事業者の負担抑制が必要だと説明されています。

これらを踏まえ事務局からは、認定時のパネル型式登録情報(※)に含有物質情報等を追加することでデータベース化する案が提示されています。

含有物質等のデータベース化イメージ(引用元:環境省

再生可能エネルギー電子申請ポータルサイトにある太陽光パネル型式リストを参照

委員からの指摘・コメントなど

これまでのヒアリングを通じた論点整理、データベース化に関する議論であったため、方向性に関して委員などからは概ね賛同する意見が相次ぎました。

データベース化を進めるに際して、FIT案件だけでなくPPAや自家消費による太陽光発電所でも広く活用できる必要があり、継続的なアップデートや実態調査の重要性も意見として挙げられています。

今後、今回までの検討会で議論された内容に基づき、制度見直しに向けた対応が進められるとのことです。

まとめ

太陽光パネルの適正な廃棄・リサイクルを進めるに際し、関連事業者の過度な負担を抑制しつつも一定の制度化は必要であり、今回の検討会では方向性が示されました。

一方で検討会でのヒアリングでは一部事業者・団体によるものであり、議論の中でも指摘がある様に必ずしも廃棄・リサイクルの実態やデータに基づくが議論がされている訳ではなく、リサイクルの実態に対する深掘りが足りないとも考えられます。

今後の検討会では、太陽光パネルの廃棄・リサイクルの実態把握と、将来予測をどのように進めるかなど、これまで取り上げられていない内容への議論に期待したいです。

参考資料