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環境省:再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会(第2回)開催

環境省と経済産業省は『再生エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会』の第2回を、2023年5月19日に開催しました。

第2回検討会では、実際に太陽光パネルのリサイクルに取組む自治体や業界団体のヒアリングが行われ、リサイクルに関する現在の取組みと課題についての議論がされています。

(第1回検討会に関しては、こちらから

検討会開催の背景と目的(再掲)

2050年に向けてのカーボンニュートラル化やエネルギー安全保障、輸入に頼る資源の問題などから、再生可能エネルギーの重要性の高まりに伴い、再生可能エネルギーの持続的な導入には地域との共生が不可欠となっています。
一方で2012年に開始したFIT制度による太陽光発電の急速な普及により、地域との葛藤や将来の廃棄など、多くの課題も浮き彫りになっています。

これまで経済産業省・環境省では廃棄・リサイクルの課題について検討会関連トピックやワーキンググループ関連トピックが開催されています。
本検討会ではこれまでの議論の内容を踏まえ、太陽光パネルの大量廃棄に対する対策としてリサイクル技術、資源循環、法制度の専門家などの議論や業界団体や自治体などからのヒアリングを通じて、具体的なリサイクル促進策をまとめる予定となっています。

自治体・業界団体へのヒアリング

今回の検討会では、地域で先進的なリサイクル・リユースに取組む福岡県、業界団体からは太陽光発電協会(JPEA)全国解体工事業団体連合会の3者から、それぞれの取組みやそこでの課題などが報告されています。

福岡県

福岡県内の太陽光発電の普及状況や、リサイクルの概要が説明されています。

  • FIT累積導入量は全国9番目で248万kW、排出ピーク時に年間8000~13000トンと推計
  • 県内の管理型処分場の受入れに制限があるものの、一方で高度リサイクルできる事業者もある関連トピック
  • 収集運搬のコストが高い

福岡県の太陽光パネルリサイクルへの取組みが紹介されています。

  • 太陽光発電(PV)保守・リサイクル推進協議会を設立
  • 廃棄太陽光パネルスマート回収システムを開発、50企業・団体が加盟関連トピック
  • 太陽光パネルリユースモデル事業の実施関連トピック
(引用元:環境省
(引用元:環境省

資源循環に向けた課題として以下の事項が挙げられており、国としても取り組む必要があると説明されています。

  • 県外での埋立処分もあるが統計情報が不足、県内でリサイクルできる中間処理業者があることの認識不足
  • リサイクルに誘導する制度として、義務化やインセンティブ付与
  • 地域ごとの排出量予測が無く、国による排出見込みの整理や情報整備
  • 発電事業終了後の放置が懸念されており、仕組み作りやルール化
  • リユースのコストや信頼性に課題があり、診断方法の効率化への技術支援、信頼性に関する基準や推奨値
太陽光発電協会(JPEA)

JPEAでは太陽光パネルのリサイクル・リユースへの取組みとして業界団体としてのガイドライン制定やリサイクル事業者リストの公開しています。
廃棄パネルのガラス分離技術が既に普及しており、太陽光パネルの6割以上を占めるガラスの再利用先の開拓が必要だと説明がありました。

太陽電池パネルの3Rの実現に向けては、現時点で直面している課題と将来の大量廃棄時の課題を別で考える必要上がると指摘しています。

【直面している課題】

  • 撤去業者および中間処理業者の周知不足
  • 廃掃法上の制約・・・県を跨ぐ収集運搬、積替保管の制約(量、期間)、自治体ごとの運用の違いなど
  • 排出量の少なさによる稼働率の低さ、それに伴う低い採算性
  • 含有物質の情報欠如・・・含有物質情報のデータベース化
  • ガラスに含まれるアンチモンは環境面での懸念はないが、グラスウール製造工程で課題と認識

【大量廃棄時の課題】

  • 資源循環(3R)への誘導
  • 社会的コストを抑えた収集運搬システムの構築・・・・特に少ロットの住宅用
  • 対応エリアの拡大
  • リサイクルしたガラスの再利用先の確保、用途開発
  • 排出時期と排出量の見通し

JPEAからは、全てのステークホルダーが関与するプラットフォーム案の説明があり、政府や自治体が主導して構築を提言しています。
本プラットフォームを通じて、リサイクルへ誘導するインセンティブや規制緩和、リサイクル事業者の参入を促すことができると説明されています。

(引用元:環境省
全国解体工事業団体連合会

全国解体工事業団体連合会からは、解体・撤去工事における安全管理や含有物質情報についての課題、適正な処理費用についての説明、その他の課題や問題点などの提起がされています。

委員からの指摘・コメントなど

今回の検討会でも各委員から多くの指摘があり、特に太陽光パネルの含有物質の情報提供の重要性については前回同様に重要な論点となっています。
一部の地域では適切なリサイクルシステムが進んでいるケースがあるものの、必ずしも全国で事業者に十分に周知されてはおらず、また実際のリサイクルの実態も充分に把握されていないとの指摘もあります。
リサイクルやリユースを促進・誘導するための仕掛けの必要性は共有されていますが、地域ごとの特徴に応じた仕組みや将来のリサイクルに携わる担い手の育成についても議論が必要という意見も多くあります。

  • 現状行われているリサイクルの処理コスト、リサイクル率や方法、地域差などの実態把握
    ⇒ 最終処分の地域差の情報、実態調査の要否は?
    ⇒ 処理コストの相場は?
    ⇒ リサイクル率やリサイクル方法は?
    ⇒ 基礎・架台は現状どのようなルートで処分されているのか?
    ⇒ リサイクルに関わるデータや情報の整理が必要
    ⇒ 先行する諸外国の事例が有用と考える
  • 太陽光パネルのリサイクルに必要な含有物質情報の整理、データベースの構築
    ⇒ データベースに登録を検討している有害物質として必要な情報は?
    ⇒ JPEAの情報提供ガイドラインの4物質(鉛、カドミウム、ヒ素、セレン)の情報だけで問題ないか?
    ⇒ 4物質以外の含有物質情報が必要な場合、どの様に情報を収集するか?
    ⇒ データベース化を進めるに際して、住宅向けはどうするのか?
  • リサイクルの仕組み構築と将来への視点
    ⇒ 処理方針の優先付け(リユース、リサイクルなど)
    ⇒ 解体・撤去に配慮した機器設計も必要では?
    ⇒ ガラスリサイクルにおける微量元素の影響はないのか、ガラスの資源循環全体で検討すべき
    ⇒ 各地域での中間処理事業や撤去・解体業者の担い手をどう作るか?
    ⇒ 人手のかかる撤去・収集運搬への対応、将来的に人手不足が懸念される
    ⇒ 安全な作業技術をどのように担保するのか、認証制度の議論も必要か?

今回のヒアリングや議論の内容を踏まえながら今後の検討を進めていき、次回の検討会でも業界団体へのヒアリングが予定されているとのことです。

まとめ

今回の検討会では太陽光パネルのリサイクルに関する業界団体等へのヒアリングを通じて、一部の先行事例やリサイクルにおける課題が整理され、リサイクルを促進するために必要な論点が挙げられました。

一方で、現実に全国で多くの事業者によりリサイクル(中間処理)が行われており、ガラスリサイクルやバックシートの処理の実態、自治体の補助金を活用した導入状況など、議論を進めるのに十分なデータが示されていないとも言えます。

今後の検討会では、実際の事業者や導入予定企業など情報収集の範囲や公開情報を基にした排出量予測や地域特性の検討など、リサイクルの実態や課題など更に詳細かつ網羅的議論が進むことが期待されます。

参考資料