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脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業


(2021-05-18)

環境省では、金属リサイクルにおいて脱炭素型リサイクルシステムの有効性を検証のため「令和2年度脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業」を実施しています。太陽光パネルに関する事業も2件採択されており、本年3月に報告書が公開されていますので、その概要を紹介します。

脱炭素型金属リサイクルシステムの概要

スマート社会の進展を背景に、IoT機器、電動化製品の需要増加に伴いこれら製品・部品の廃棄量の増加が見込まれています。これら廃棄物には非鉄金属・レアメタルが含まれており、適切なリユース、リサイクルが資源効率化、CO2排出量削減、最終処分場延命等の環境負荷低減につながります。
国内では廃棄物に関する法規・リサイクル制度、収集システムに関するインフラ、処理技術や人的リソースに高い水準があるものの、リサイクル事業者、金属回収事業者等の連携・協調に課題があると、環境省は分析しています。

本事業では全体最適の観点で、装置開発、リサイクル工程から金属回収工程にわたり業種横断的に技術実証を行い、二酸化炭素排出削減に向けた脱炭素型金属リサイクルシステムの有効性を検証のため実証事業が実施されました。使用済太陽光パネルに関するものとしては、以下の2件が実施されました。

太陽光パネルの収集・リユースおよび非鉄金属の回収に係る技術実証

【実施事業者】
イー・アンド・イーソリューションズ株式会社

【事業概要】
太陽光パネル中のセル/EVAシートの価値(銀・銅の有価性、ガラス・プラスチック等の忌避性)の簡易評価方法、及び商業スケールの非鉄金属濃縮プロセスの技術について実証するとともに、可能な限り最終処分場に依存しない太陽光パネル処理ルートの構築に係る試験を行う。

太陽光パネルの高度選別技術開発とリサイクル・システム構築による早期事業化

【実施事業者】
株式会社新菱

【事業概要】
太陽光パネル中の有価物の濃縮化、製錬忌避成分の除去等に向けた高度破砕・選別技術開発の実証を行い、選別後の回収金属を用いた精錬会社での金属回収エネルギー使用量削減の評価、及びリサイクルガラスの用途開発を行い、ガラスのリサイクルシステムの構築を図る。

太陽光パネルの収集・リユースおよび非鉄金属の回収に係る技術実証

本事業では使用済太陽光パネルのガラス分離後の「セル/EVAシート」に焦点を絞り、「非鉄製錬原料の濃縮」、「セル/EVAシートの価値の評価方法実証」、「処理ルートの構築実証」の3つの検証が実施されました。

実証事業1:非鉄製錬原料の濃縮の実施

太陽光パネル10種類、3種類のガラス除去方式でそれぞれ20枚、計600枚のセル/EVAシートを試験サンプルとして物理選別および熱処理による金属濃縮が実施、物理選別を行った場合に非鉄製錬の製錬原料となり得ると報告されています。
また鉛の溶出試験を行った結果、計30検体のうち8つの検体で金属等を含む産業廃棄物の埋立処分に係る判定基準(Pb:0.3mg/L)を超過するという結果が得られています。

実証事業2:セル・EVAシートの価値の評価

シートのサンプルから、セル/EVAシート中の銀、銅、鉛、フッ素の含有量の算出方法を検証されています。今後手順の標準化望まれるものの、本実証業務で検証した価値の算出手法は、妥当な手法と報告されています。

図1_バックシートの組成の推計結果
図1:バックシートの組成の推計結果(引用元:環境省)

実証事業3:処理ルートの構築の実証

図2_埼玉県下の住宅用太陽光発電設備の導入件数
図2:埼玉県下の住宅用太陽光発電設備の導入件数(引用元:環境省)

埼玉県を対象に、最終処分場に依存しない太陽光パネルの処理ルート構築の検討実施されています。
2021年度に継続予定の太陽光パネル回収試験を想定し、本年度は回収試験の計画を策定されています。

上記事業に加えて、金属リサイクルに伴うCO2削減効果が評価されています。
年間1,200トンの太陽光パネルの処理を想定した場合に、セル/EVAシートからの銀と銅の回収により、CO2排出量削減効果が6,341[t-CO2/年]あると報告されています。

※成果報告書:令和2年度脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業(太陽光パネルの収集・リユースおよび非鉄金属の回収に係る技術実証)委託業務

太陽光パネルの高度選別技術開発とリサイクル・システム構築による早期事業化

本事業に先行する形で「平成29年度低炭素製品普及に向けた3R体制構築支援事業炭素繊維及び太陽電池リサイクルの設備共用による早期事業化報告書」が実施されています。
本事業ではカバーガラスが割れた状態の使用済み太陽光パネルを対象に、EVA等有機物を熱分解し、残存成分であるガラス、銅線及びシリコンセルの混合物を素材毎に高度に選別する技術開発が行われました。
特にマテリアルリサイクルの促進のために、熱分解焼成後の混合物中の約9割を占めるガラスの品位を上げることも目的とされています。

本技術開発を実施したことで、以下の結果が得られたとあります。

  • 篩選別では、銅濃度が50%以上、銀濃度が8,500mg/kg以上と高濃度で金属成分を回収
  • シリコンセルを高品位で回収することにより、銀濃度を5,600mg/kg以上と高濃度で回収
  • ガラスカレットを高品位で選別回収でき、得られたガラスカレットの品位は99.999%を達成

さらに、これまでにあまり把握できていなかったカバーガラスの組成分析を、36種類の太陽光パネルにおいて実施され、以下の結果が得られています。

図3_PVカバーガラスの分析結果まとめ
図3:PVカバーガラスの分析結果まとめ(引用元:環境省)
①主要成分
  • SiO2:70.20~72.40%(平均値:71.13%)
  • CaO:9.19~11.86%(平均値:10.08%)
  • Na2O:12.83~15.00%(平均値:13.93%)
②消泡剤(ガラスの透過性向上の目的で添加)
  • Sb2O3:36検体中34検体で検出、平均値0.21%、最大値0.32%
③廃棄物処理法に関連する項目
  • As2O3:36検体中5検体で検出、最大値0.013%含有

選別回収された材料に関して、ガラスカレットはグラスウール原料として、銅線およびセルは精錬での有価性の評価が実施されています。
グラスウール試作では既製品と同等の品質が得られたものの、カバーガラスに含まれるSb2O3やAs2O3の設備への長期的な影響を確認する必要があります。
選別回収された銅線及びセルは精錬会社で評価を行い、銅及び銀の品位が高く、既にある事業スキームの中でリサイクルが可能なことが確認されています。

リサイクルによるCO2削減効果は、埋立処理と路盤材の2パターンで比較対照が行われています。
本研究開発の条件において、埋立と路盤材それぞれでのCO2削減効果は、比較対照埋立:17.0kg-CO2/枚、比較対照路盤材:29.6kg-CO2/枚の算出結果と報告されています。

※成果報告書:令和2年度脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業(太陽光パネルの高度選別技術開発とリサイクル・システム構築による早期事業化)委託業務

まとめ

本実証事業では、使用済太陽光パネルのリサイクルで発生する非鉄金属・レアメタルがリサイクル可能であり、リサイクルガラスの資源性、太陽光パネルリサイクルをおこなうことでCO2削減が実現できると報告されています。
これら結果は既に普及が進むリサイクル装置、導入企業でも活用されることが望まれるとともに、パネルに含まれる有価金属の含有量の減少や、廃棄がピークを迎えた際の大量のガラスの活用方法などの課題へも対応が望まれます。

参考資料

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