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太陽光パネル廃棄量の将来予測

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(公開日:2021-01-20)
(更新日:2022-12-24)

太陽光パネルの大量廃棄とは?

太陽光発電設備の大量廃棄問題は、2009年に太陽光発電の余剰電力買取制度として導入されたものが、2012年に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(以下FIT制度)」として全量買取制に制度を変更されたことにより、全国でメガソーラーが急激に普及したことに端を発します。
太陽光発電は他の再生可能エネルギー(風力発電やバイオマス発電、地熱発電など)に比べて高いノウハウや技術が不要であり、資本負担が少なくキャッシュフロー回収が早期に見込めることなど、業種・業界を問わず多くの事業者が参入しやすく全国津々浦々で爆発的に普及が進みました。

当初は再生可能エネルギー普及に制度の軸足が置かれたこともあり、一般には廃棄時の問題に関しての関心は少なかったと考えられますが、一方で2015年には将来の大量廃棄に関しても問題提起はされていました。
事実、同年6月には環境省により『太陽光発電設備等のリユース・リサイクル・適正処分の推進に向けた検討』がなされており、2030年代以降に太陽光パネルの大量廃棄が指摘されていました。

環境省による太陽電池モジュール排出見込量
太陽電池モジュール排出見込量(引用元:環境省


設置された太陽光パネルがFIT経過後(寿命20年、25年、30年)に一律排出されるという単純な試算ですが、『年間80万トン』もの廃棄パネルの排出見込量が見込まれていました。

太陽光パネルの廃棄量予測

前項までで考察した太陽光パネルの導入容量分の太陽光パネルは、いずれ役割を終えて廃棄物として排出されます。
しかしFIT期間の20年が終了時点で一様に廃棄されるわけではなく、実際の排出量は様々な要因が影響すると考えられます。

  • FIT期間終了後の土地賃貸契約継続の有無
  • 20年経過後の太陽光パネルの発電効率
  • 自家消費や小売り電気事業者による発電した電気買取りの有無

またパネルの初期不良、運転中のパネル破損・性能劣化による交換、自然災害等による発電所被災など、運転中の発電設備からも一定量のパネル廃棄は現在も対応が必要な問題として顕在化しています。

太陽光パネルのシナリオ別排出量推計_20230110
太陽光パネルのシナリオ別排出量推計(出所:NEDO

NEDOによる「太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト」でこれら条件を加味した複数のケースの検討がされています。
2035年ごろのピークで『年間17~28万トン』の使用済太陽光パネルが排出されると予測されています。

技術開発や政策、また社会のあり方など、不確実性が高く上記の予測もどのようなシナリオに落ち着くかは今後注視する必要があります。
一方で年間数10万トンにおよぶ廃棄物が発生することは疑いのない事実であり、使用済太陽光パネルの大量廃棄に備える必要があります。

埋め立て処分場の逼迫

事業活動により生じた廃棄物(産業廃棄物)は再生利用や中間処理などを経て、リサイクルできないものが最終処分として埋立処分されます。
環境白書(令和4年版)によれば、産業廃棄物の排出量は『3億8596万トン(2019年度)』であり、『916万トン(約2%)』が最終処分されているとあります(関連トピック)。

産業廃棄物の処理の流れ_2019年度(環境白書)
(引用元:環境省

産業廃棄物最終処分場の残余容量は1.54億立方メートル、残余年数は16.8年となっており、残余容量は長期的に減少傾向です。
将来の最終処分場の逼迫が懸念されることから、太陽光パネルに限らず廃棄物のリサイクルや資源循環が必要となります。

最終処分場の残余容量及び残余年数の推移(環境白書R4)
(引用元:環境省

現在の廃棄量はどの程度なのか

太陽光パネルの大量廃棄は10年以上先と予測されていますが、一方で現在でも発電所の建設時や運転中の不良・破損、自然災害等で一定量のパネルが廃棄されています。
環境省の調査報告書(関連トピック)によれば、現在廃棄されている太陽光パネルは年間6000~7000トン、そのうち1.5%~3.3%程度が最終処分されているとあります。
(2/3がリユース、残り1/3が中間処理されリサイクル率は約90%、残りの約10%が埋立処分)

太陽電池モジュールのリユース・リサイクル量推移
(引用元:環境省

仮に年間30万トンが全て廃棄されたと場合、年間で3万トン(30万トン × 10%)が最終処分されることになり、2019年度の最終処分量の約0.33%となります。
少なくない量ではありますが、一部報道で指摘されるほどの影響はないと考えられ、現実のデータに基づく冷静な議論が必要です。

太陽光発電導入の地域的な偏在

FITで導入された太陽光発電所は、20年間の売電期間終了後に撤去・廃棄が始まり、2030年代中頃の排出ピークを迎えると予測されています。
しかしながら『排出時期』の視点での議論は多く見られるものの、地域的な偏在に関しての視点ではあまり議論や報道がされていません。

都道府県別でのFITによる太陽光発電の導入容量を示したものが、下図になります。
日照条件や立地条件の良い地域(北関東や東海地方、九州など)で、より多くの太陽光発電所が導入されているのが分かります。

地域別FIT導入量(資源エネ庁資料からPVリサイクル.com作成)

また都道府県との人口を比較すると、電気の需要が多いと考えられる大都市圏では導入が少ない一方で、地方で導入が進んでいることが分かります。

FIT導入量と人口(資源エネ庁資料等からPVリサイクル.com作成)

発電所の撤去・廃棄時において発電事業者は排出事業者として廃棄物処理の責任を一義的に負いますが、太陽光発電による電気を使用している受益者(大都市圏)と負担者(地方)という関係もあることからも、廃棄物処理に関わる事柄は国民的な議論や理解が必要だと考えられます。

※NIMBY(ニンビー):Not In My Back-Yard、公共のために必要な事業であることは理解しているが、自分の居住地域内で行なわれることは反対という住民の姿勢を揶揄していわれる概念。

まとめ

政府は2050年のカーボンニュートラル及び2030年の再エネ比率36~38%の目標を掲げており、太陽光発電を含む再エネ設備の積極的な導入が必要です。
一方で太陽光パネルの廃棄・リサイクルへの関心も高まっており、将来の大量廃棄への対策も求められます。
2012年に始まったFIT制度により太陽光発電は急速に普及したため、その撤去・廃棄のピークも同時期に集中する懸念があり、また導入量の地域差を考慮した政策・制度の検討も必要になります。

持続可能な再生可能エネルギーを今後普及させるためにも、太陽光パネルの廃棄・リサイクル問題の動向には、今後も関心を持つ必要があります。

参考資料