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経産省:令和4年度動静脈連携による自律型資源循環システム強靭化等に関する調査分析報告書

経済産業省では政策立案のために委託調査を実施しており、令和4年度の委託調査が報告書として公開されています。

本報告書の中では太陽光パネルに関する項目もあり、以下では当該部分を抜粋して紹介します。

本報告書の目的

世界的に循環経済(サーキュラーエコノミー、CE)への移行が進む中、経済産業省でも2020年5月に「循環経済ビジョン2020」が策定されました。

しかしながら国内のCEの取組みは限定的であり、また産業政策や経済安全保障の観点から、成長志向型の資源自律経済の確立に向けた検討の必要性が指摘されています。

今後の資源循環経済政策を進める上で動脈・静脈産業の連携が不可欠であり、この報告書では動静脈産業の循環構造と課題の調査分析を行い、地域社会におけるCEの取り組み事例などが報告されています。

循環構造の調査分析と「動静脈物流解剖図」

太陽光パネルの循環構造と、ライフサイクルの各段階における課題が整理されています。

太陽光パネルの動静脈物流と課題(引用元:経産省

循環構造のポイント

現在の太陽光パネルの循環構造に関しては、環境省による実証調査関連コラムやNEDO推計関連コラムやJPEAの資料などを元にポイントが纏められています。

  • 2020年の国内出荷量は5,128MW、非住宅用が全体の87%程度
  • 施工される太陽光パネルの84%(容量ベース)は海外輸入品
  • 2020年の使用済太陽光パネル排出量は6,308t(環境省)
  • 2035~37年には太陽光パネルの排出量ピーク時に年間約17~29万t(経産省)
  • 現状、排出された太陽光パネルは解体業者等により撤去され、中間処理業者によってリユース、リサイクル又は最終処分されている

循環構造を踏まえた課題・方向性

太陽光パネルの循環構造を踏まえ、ライフサイクルにおける5段階ごとに課題・方向性が纏められています。

製造段階の課題・方向性

含有物質等の情報を正確に把握することが求められており、経済産業省においてもFIT制度の認定申請で含有物質等の情報を含める方針が示されています。

FIT認定申請を通じて入手した情報をデータベース化し、処理事業者等への情報共有可能にするなど、活用のあり方を引き続き検討するとともに、太陽光パネルメーカーによる含有物質等の情報発信も方向性として考えられる。

販売・利用段階の課題・方向性

再エネ特措法に基づく措置により国民負担で導入された発電設備については、FIT期間終了後も発電事業の継続的な実施が期待されている。

FIT期間後の設備の適切な管理や設備更新など、長期稼働させるための検討が必要である。

回収段階の課題・方向性

太陽光パネルの撤去等の際、相談先が分からず引取りしてもらえないといった事例が指摘されており、関係者への情報発信・周知が必要である。

関係省庁が連携し太陽光パネルの廃棄ルール等の情報発信・周知や、廃棄に関わる各種法律・制度等を適切な運用が望まれる。

リサイクル段階の課題・方向性

現在、使用済太陽光パネルの適切廃棄や循環管理に関する(太陽光パネルに個別の)法的ルールは整備されておらず、リサイクルを促進・円滑化するための制度的支援や義務的なリサイクル制度などを検討すべきである。

引続き関係省庁が連携して、リサイクルコスト低減に向けた技術的・制度的支援、義務的リサイクル制度の活用に向けた実態把握・検討を実施することが求められる。また実際にリユース・リサイクルを適正に行うことができる主体の創出・育成を行うことも重要である。

回収された太陽光パネルの販売は自由な経済活動であり、海外への不適正輸出の可能性もある。海外リユースに関する実態把握やガイドライン・廃棄物処理法の厳格運用も必要と考えられる。

フロー全般の課題・方向性

これまで将来的な太陽光パネルの排出量推計は検討されてきたが、直近の排出量については定量的な把握がなされていない。

廃棄の発生量のピークに向けて制度検討の基礎とするため、排出量や排出後のフロー・処理方法、最終処分場への影響についても把握が必要である。

循環における課題と解決手法の調査

本項では、国内外の法制度(補助金等)や技術開発等が調査されており、欧米を中心とした太陽光パネルの適正なリサイクル・処理に向けた取組み事例が紹介されています。

(引用元:経産省

まとめ

本報告書では、脱炭素社会への移行と並行して必要不可欠となる資源循環経済の実現に向けて、さまざまな製品・素材の動静脈産業の循環構造の現状がまとめられています。
太陽光パネルに関しても2030年代に大量廃棄が懸念されており、現在も国や自治体、企業などで課題解決に向けて多くの取組みが実施されています。

一方で市場全体や企業などの取組み、各種主体によるこれまでの議論を俯瞰的に整理した資料を目にする機会は少なく、本報告書で述べられている現状認識・課題・方向性が今後の政策の議論や制度化において適切に反映されることが期待されます。

参考資料