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廃棄等費用の積立制度から考える市場規模と課題


(作成:2022-06-30)

2022年4月1日に改正される再エネ特措法に基づき、FIT・FIP認定された10kW以上の太陽光発電所で廃棄等費用の積立が制度化されました。
これらの廃棄等費用積立金は事業終了時において発電所の撤去・廃棄に要される費用となることから、将来の太陽光パネルリサイクルの市場規模として推計することができます。

今回のトピックでは、10kW以上のFIT認定事業を対象にした将来のリサイクル市場の規模推計と課題を検討していきます。

FIT認定事業の廃棄等費用の積立金額の推計方法

資源エネルギー庁のWEBサイトに、FIT認定事業の詳細(発電出力、認定年度、運転開始・調達期間終了年月)が公表されています。
また廃棄費用積立基準額についてはガイドラインに記載があり、これら資料を用いて積立金額の推計を行うことができます。

廃棄等費用積立てガイドラインについては、過去のトピックで概要を紹介しています。

上記の資料を基に、ガイドラインに規定された条件(想定設備利用率、解体等積立基準額)に基づき各発電所における廃棄等費用積立額を試算し、FIT終了年ごとに集計します。
20kW未満のFIT認定事業については個別の発電所についての情報が公表されていないため、『エリア別の認定及び導入量』として公開されている情報から推計します。

廃棄等費用積立金額の算出・集計方法
図2_解体等積立基準額(2022-Apr)
廃棄費用の外部積立額(引用元:資源エネ庁

外部積立期間10年間の拠出額は、1MWのメガソーラーの場合以下の通りに計算されます

  • 計算式:(10年×365×24)×(発電所定格出力×設備利用率)× 解体等積立基準額
  • 2012年度認定:約1,703万円(設備利用率12.0%、基準額1.62円/kWh)
  • 2020年度認定:約994万円(設備利用率17.2%、基準額0.66円/kWh)

廃棄等費用積立金額の推計

廃棄等費用積立はFIT終了前の10年間が対象であり、終了年月で積立が満了したものとして集計したものを示します。

廃棄等費用積立額の推計(事業計画認定情報等からPVリサイクルcom作成)

FIT認定がピークだった2014年から20年後に積立額が多くなっており、ピークで年間1,000億円超、累計で8,000億円程度の規模になると試算されます。これに加えて住宅用などの10kW以下のFIT認定されたものやPPAモデルなども含めると、市場規模はさらに大きいと考えられます。

なおFITによる売電期間20年の終了後に直ちに発電所が撤去・廃棄されることは想定されておらず、これらの積立金がすぐに撤去・廃棄に供する費用とは考えにくいものの、廃棄・リサイクル市場の規模感を把握することができます。

2012年~2022年のFIT認定事業の積立金推計額を、都道府県ごとに集計したものが下図となります。

廃棄等費用積立額の地域別推計(事業計画認定情報等からPVリサイクルcom作成)

FIT認定の地域差が大きいことから、将来大量廃棄が始まった際の廃棄処理・リサイクルの需要も地域的な偏りを考慮する必要があることを示しています。

撤去・廃棄費用からの市場規模の推計

FIT認定事業が20年間が終了するのは早くとも2030年代前半であり、これまで太陽光発電所が実際に撤去・廃棄された事例はごく僅かだと考えられます。
一部の太陽光発電所では、水害や豪雪被害などで太陽光パネルの撤去や交換が行われていますが、撤去等費用の実績に関する統計やデータは、現時点で公表されているものは確認できていません。

撤去・廃棄費用の試算として、経済産業省が廃棄等費用積立の制度化に際して事業者に対して撤去・廃棄費用の調査を実施したものがあります。

太陽光発電設備の廃棄等費用の集計結果(引用元:経産省

一定の条件において、3種類のケース(工法)で撤去・廃棄等に要する費用が試算されています。

  • コンクリート置き基礎
  • スクリュー杭基礎
  • 基礎は撤去せず残置

アンケート結果の中央値と廃棄等費用の積立基準額を比較すると、概ね積立費用と実際に必要となる費用がバランスされている様に見受けられます。

工法別の廃棄費用と積立基準額の比較(経産省資料等からPVリサイクルcom作成)

上記の想定額を用い、すべてのFIT認定事業について撤去・廃棄費用を推計したもの示します。

撤去・廃棄費用の推計値(事業計画認定情報等からPVリサイクルcom作成)
撤去・廃棄費用の推計値(事業計画認定情報等からPVリサイクルcom作成)

想定した条件(基礎仕様、撤去有無)により推計値には、大きな違いがあることが分かります。
廃棄等費用積立額は『スクリュー杭基礎』の条件における撤去・廃棄費用の推計値に近いですが、個別の発電所で必要となる撤去・廃棄費用が異なることは容易に推察されます。

太陽光発電所の仕様・条件(過積載率、傾斜やアクセス等の設置条件、地域ごとの撤去工事費用など)により本来はそれぞれで適切な費用水準があると考えられます。発電事業者は積立てた廃棄費用のみで必ずしも撤去・廃棄費用を賄えない可能性を認識する必要があると考えられます。

現在のパネル処理費用実績から推計した場合

環境省が2021年に実施した『使用済太陽電池モジュールのリサイクル等の推進に係る調査業務(関連トピック)』にて、現在の太陽光パネルのリサイクル費用(中間処理としての受託費用)が調査されています。
太陽光パネル1枚当たり2000円~4000円であり、中央値は3150円/枚となっています。

リサイクル費用に関する調査結果
(引用元:環境省

太陽光パネル1枚当たりの出力を250W/枚(前述の経産省調査報告書の試算値と同条件)とした場合、パネル処理の費用は12,600円/kWとなり、前項で用いた撤去・廃棄費用での試算と大きな差があります。

廃棄等費用の集計結果と現状のパネル処理費用の比較(経産省資料等からPVリサイクルcom作成)

現状のパネル処理費用を用いて撤去・廃棄費用を推計した場合、廃棄等費用積立額を大きく上回る額が必要となります。

現状のパネル処理費用による撤去・廃棄費用の推計値(事業計画認定情報等からPVリサイクルcom作成)
現状のパネル処理費用による撤去・廃棄費用の推計値(事業計画認定情報等からPVリサイクルcom作成)

不確実な廃棄費用をどのように捉えるべきか?

廃棄等費用積立額の試算と実際に撤去・廃棄にかかる費用推計を整理しましたが、計算根拠となる費用の根拠によっては推計結果に大きな違いが生じる結果となり、将来の市場予測や事業計画などの参考にし難いものです。
このような結果になった背景と、どのような対策(検討)を検討すべきか考える必要があります。

  • モデルケースでの撤去・廃棄費用基準額と個別の太陽光発電所の条件の相違
     ⇒ 積立金だけで、必ずしも全ての発電所で撤去・廃棄費用が賄えない可能性もある
  • 現在のパネル処理技術・処理費用と、将来の技術水準・費用の見込み
     ⇒ 将来どの程度まで処理費用が下がるか?
     ⇒ 処理費用の低下により、中間処理施設の普及が低調になる可能性は?
  • 撤去工事や収集運搬など、将来的に費用水準
     ⇒ 人口減少・高齢化・過疎化による人手不足によるコスト増減は?
     ⇒ 燃料価格上昇の影響や、EV化による運輸業界そのものの変化は?
  • 使用済パネルのリユースによる再利用
     ⇒ 将来のリユース市場の普及や発電所の撤去時の費用回収の可能性は?
  • FIT20年終了後も発電事業を継続の必要性
     ⇒ 撤去・廃棄費用を確保も視野に、発電事業を継続・延命を検討すべきか?

積立制度は2022年7月から順次適用されますが、将来の撤去・廃棄費用の予測には不確実性が避けられません。
発電事業者は制度化された廃棄等費用の積立で満足することなく、実際にどの程度の費用が必要であり、どの様な不確実性があるのかを積立と並行して検討する必要があると考えられます。

発電事業者自らが将来の撤去・廃棄費用に関するリスクを低減させることは必要ですが、国や行政などによる精度の高い調査や情報収集など予見性を高める対策が求められると考えられます。

まとめ

廃棄等費用の外部積立制度が対象とする10kW以上のFIT認定事業の情報から、将来のリサイクル市場規模の推計しました。

2030年代に年間1,000億円規模の撤去・廃棄に関わる市場が予想されますが、地域の偏りや規模の不確実性が高いと考えられます。静脈産業に関わる事業者にとっては将来の事業機会である一方で、発電事業者側は将来必要となる撤去費用を確保することが求められます。

地域社会との調和や資源循環の実現などに向けて適正なリサイクルを進める必要性は今後も高まるため、将来の撤去・廃棄に関わる不確実性を低減する取り組みが発電事業者や国・行政の双方に必要だと考えられます。

参考資料

  1. 資源エネルギー庁:事業計画認定情報 公表用ウェブサイト
  2. 資源エネルギー庁:再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法 情報公表用ウェブサイト
  3. 資源エネルギー庁:廃棄等費用積立ガイドライン
  4. 環境省:令和3年度使用済太陽電池モジュールのリサイクル等の推進に係る調査業務報告書

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