IEA PVPS(国際エネルギー機関の太陽光発電システムプログラム)は、Task 12参加国におけるPVモジュールリサイクルの現状と近年の研究開発について取りまとめた報告書「Status of PV Module Recycling in IEA PVPS Task 12 Countries」を2025年9月に公表しています。
本報告書は、これらのテーマに関してこれまでの報告書(2022年9月公表)を更新し、内容を拡充したものとされています(関連トピック)。
本レポートでは、2024年に調査されたデータに基づき、PVモジュールのリサイクルの現状として各地域・各国における関連する規制や制度、PVモジュール廃棄物に関する情報、リサイクル事業者、および今後の展望について報告されています。
また、公的資金により支援されているPVモジュールリサイクル技術に関する近年の研究開発プロジェクトについても整理されています。
本トピックではレポートの概要を紹介し、注目すべき内容をピックアップししていきます。
※以下の内容はPVリサイクル.com®運営者による要約であり、正確な内容は原本を参照ください
本レポートでは、Task12に加盟する各国の太陽光パネルのリサイクルに関する現状がまとめられています。
欧州では、EUによるWEEE指令を通じてPVモジュールのリサイクルが義務付けられており、全てのEU加盟国が国内法として施行されています。
一方で、東アジアや豪州・米国では、PVモジュールの廃棄に関するリサイクル義務付けは議論段階にあり、各国の廃棄物関連法令・規制の枠組みの下で取り扱われています。
各国のPVモジュールの廃棄量は現状では少ないものの、国による違いはあるもののPVモジュールのリサイクルを専門に行う企業の参入が報告されています。
≪運営者による注記≫
本調査結果は2024年時点で入手された情報を基にまとめられており、各国の最新の制度構築や企業の取組みは上記内容から進展しています。
Task12に加盟する各国について、①PVモジュールの廃棄に関する規制とスキーム、②廃棄PVモジュールの処理量、③廃棄PVモジュールのリサイクル企業、④今後の廃棄量の見通しの4点について、それぞれ調査が行われています。
【欧州】
・2012年のWEEE指令を通じてPVモジュールのリサイクルが義務付けられており、全てのEU加盟国が国内法を施行。
・EU市場にPVモジュールを供給する生産者に対し、自前の回収・リサイクル制度を運営もしくは生産者コンプライアンス制度への加入を義務付け。
・Eurostatの統計によれば、2022年に18カ国で48,395トンの使用済PVモジュールを回収。
【ドイツ】
・2022年に回収されたPVモジュールの量は16,430トン、そのうち15,195トンがリサイクルまたは再利用。
・主要なリサイクル企業として、Reiling(Si系PVモジュールの処理)やFirst Solar(CdTeモジュールに特化)などが稼働中。
・Lux Chemtech、Impuls Tec、FLAXRES、Solar Materialsなどの新興リサイクル企業、リサイクル技術とインフラ拡張に期待。
・廃棄物量は2030年に40万トン~100万トン、2050年には最大430万トンまで増加すると予測。
【フランス】
・2024年に処理されたPVモジュールの量は7,143トン、86.81%がリサイクル、8.12%が処分された。
・非営利の環境団体であるSorenが、国内のPV廃棄物管理を集約的に運用し、民間への入札手続きを実施。
・国内の3カ所(Gallo France、ENVIE 2E Midi Pyrénées、ENVIE 2E Aquitaine)で処理を実施しており、CdTe系はドイツに移送して処理。
・Sorenによれば、2030年までに4.3万トン以上、2040年までに11.8万トンのPVモジュール廃棄物量が予測されている。
【イタリア】
・2022年に回収されたPVモジュールの量は21,493トン、家庭からの628トンとその他からの21,315トンで構成。
・専用のPVリサイクル施設は無く、今後の排出に備えて9-TechやEcoWeTechなどが実証プラントを開始。
・累積廃棄物量は2030年で14万~50万トン、2050年には220万トンに増加すると予測。
【スペイン】
・2022年に回収されたPVモジュールの量は2,603トン、2,279トンがリサイクル。
・Solar Recycling、Reciclajes Pozo Cañada、FCC ÁMBITO、La Hormiga Verde、Medenasa、CERFO、ROSI Solarなど、複数のリサイクル施設がPVモジュールの処理用に認可。
・国内のPVモジュール廃棄物の量は少ないものの、初期に設置された太陽光発電設備の寿命にともない、短中期的には増加する見込み。
【ベルギー】
・2022年に1,855トンのPVモジュール廃棄物が回収、そのうち70%がリサイクル。
・PV CYCLEがPVモジュールのコンプライアンス制度として認可されており、Comet Group、Maltha、Out of Use、Recmaなどの企業が回収・リサイクルに関与。
・地域ごとに異なる規制の解消や収集インフラの整備が課題となっており、より堅牢な廃棄物管理枠組みが構築される見通し
【オランダ】
・2023年に回収されたPVモジュール廃棄物は1,381トン。
・OPEN財団が電気機器生産者に代わってPVモジュールを含む電子廃棄物の生産者責任を担っている。
・現在は国内でPVモジュールの処理は主にベルギーの施設に輸送しているが、Open財団によるPVモジュールリサイクル事業者の選定を開始。
・PVモジュール廃棄物量は2030年頃に年間1万トンを超え、2050年頃には年間10万トン以上に達すると見込まれている。
【オーストリア】
・2023年に回収されたPVモジュール廃棄物は62トン。
・廃棄物量が少ないため、オーストリアにはPVモジュールのみを処理する特定のリサイクルプラントは稼働していない。
・廃棄物予測では、2050年に年間約2万トン近くになると想定されている。
【スウェーデン】
・現在の廃棄量は無視できる程度であり、産業規模のリサイクルプロセスを維持するには不十分。
・回収ネットワークは自治体により管理されており、El-KretsenやRecipoがPV廃棄物の回収を実施。
・大量のPVモジュール廃棄物が発生するのは、2040年以降になると予想されている。
【スイス】
・2023年に回収されたPVモジュール廃棄物は約750トン。
・SENS eRecycling財団が使用済PVモジュールのリサイクルを管理、回収はKWB Planrealに委託され、ドイツに移送して処理が行われる。
・PVモジュール廃棄物量は2032年頃に年間5,000トン以上、2050年までに2万トン以上に達すると予測されている。
【日本】
・経済産業省と環境省が共同でEOL PVモジュールの適切な処理を促進するための考え方が取りまとめられ、リサイクルの義務付けや支払い制度が提案されている(※2024年時点のため、最新動向とは異なる)。
・2022年に回収されたPVモジュール廃棄物は2,079トンと推定され、1,638トンがリサイクル、441トンが再利用。
・40社以上の企業がPVモジュール廃棄物を処理しており、半数以上が専用リサイクル設備を導入している。
・主要なアプローチは機械的手法、一部の企業は熱分解などの熱的手法も使用されている。
・PVモジュール廃棄物の量は、2030年代半ばまでに年間22万~34万トンに増加すると予測。
【韓国】
・PVモジュール廃棄物を含むEPR規制が2023年1月に施行され、E-Cycle GovernanceがPVモジュール廃棄物EPRの専任運営主体。
・2023年には、688トンのPVモジュール廃棄物がリサイクル。
・国内の5社(Won Kwang S&T、Yoonjin Tech、Chungbuk Technopark、Seokchung Korea、JRC)で合計年間14,725トンのリサイクル能力が確立。
・モジュール廃棄物量は2030年に年間20,935トン、2040年には112,564トンへ増加すると予測されている。
【中国】
・2023年から2024年にかけての優遇政策により、技術の改善やリサイクル企業の増加によりPVリサイクル産業が改善。
・PVモジュール廃棄物の量に関しては、公表された公的データは未公開。
・PVリサイクル産業は急速に発展しており、幾つかの主要企業がPVモジュールリサイクルラインを建設している。
・PVモジュール廃棄量は2040年に1,200万トン、2050年に5,500万トンに達すると予測されている。
【オーストラリア】
・連邦規模でのPV廃棄物に関する制度は無いが、新たな規制案を2023年6月に発表。
・廃棄されたPVモジュールに関する公式な統計情報はないが、廃棄量は少ないと推定されている。
・2022年以降、PV Industries、Elecsome、Sircel、Solar Renew、Solar Recovery Corporation、Pan Pacific Recycling、Lotus Energy RecyclingなどのPVモジュールリサイクル企業が参入。
・PVモジュール廃棄物の累積量は2030年以降大幅に増加し、2050年までに200万トンを超えると推定されている。
【米国】
・PVモジュールリサイクルに特化した連邦規制はないが、2023年10月にEPAがPVモジュールをユニバーサル有害廃棄物規制に追加するための手続きを開始。
・カリフォルニア州、ハワイ州、ワシントン州ではEOL PVモジュール管理に特化した規制を採択、他州や業界団体による政策議論が進展。
・NREL(現NRL)のPV ICEモデルによれば、2022年に約760MWのSi系PVモジュールがEOLに達すると推定。
・少なくとも43社の企業が、全米の27州にリサイクル施設を設置、専用PVリサイクル設備に投資が進んでいる。
・Si系PVモジュールの廃棄量は、2030年までに年間8.7万トン、2050年までに年間82万トンと推計されている。
各国の現状をまとめた一覧表は、こちらからダウンロードできます。
現在の太陽光発電の導入量とPVモジュールの廃棄量には時期的なギャップがあることから、廃棄PVモジュールの処理量の少なさやロジスティクス上の課題、回収されたリサイクル材市場の未成熟などが指摘されています。これら要因により、PVモジュールのリサイクルは高コストかつ低収益なシナリオに留まっています。
将来の需要に対応して高付加価値かつ低コストなリサイクルを実現するため、各国で公的・政府資金によって技術開発(R&D)プロジェクトが実施されています。
本レポートでは、これら技術開発の動向や各国のR&Dプロジェクトの概要がまとめられています。
PVモジュールのリサイクルでの技術開発は20年以上にわたって実施されており、PV技術や市場状況とともに変化しています。
当初、結晶シリコン系のリサイクルは製造コスト削減のためのシリコンセル/ウェハの回収が目的とされていましたが、その後、高価値材料および有害物質の回収が重視されるようになっていきます。CdTeやCIGSなどの化合物系では、環境影響の軽減を目的に有害物質および希少金属の回収が重視されていました。。
2010年代後半からはリサイクル率の向上を目的に、経済性も考慮したガラスの回収・リサイクルに焦点が当てられています。PVモジュールのリサイクル技術も層分離から金属回収へと拡大しており、回収された材料の価値ある循環利用の模索へと進んでいます。

欧州でのPVリサイクル技術開発では、EUによる支援枠組みとして2014年から2020年までの『Horizon 2020 Work Programme』や、Horizon 2020の後継である『Horizon Europe(2021〜2027年)』において、以下のようなR&Dプロジェクトが実施されています。
また、EUによる支援枠組みとは別に、いくつか国では独自にR&Dプロジェクトが実施されています。
アジア・太平洋地域では、日本、中国、豪州のPVリサイクルの技術開発が紹介されています。
PVモジュール廃棄物の増加や循環経済への関心の高まりに伴い、世界各国で技術開発プロジェクトが実施されており、開発された処理ステップは、①層分離、②金属回収、③材料利用に分類されます。
近年のPVモジュールリサイクルの技術開発動向が示す通り、層分離技術だけでなく高付加価値材料の回収やリサイクル材料の市場での利用に焦点が当てられており、経済性や産業利用のために回収率や純度の目標が設定されています。

各国の技術開発プロジェクトをまとめた一覧表は、こちらからダウンロードできます。
2010年代以降、世界中で太陽光発電の導入は予想以上に急速に拡大した一方で、今後増加する太陽電池モジュールの廃棄に備え、法制度や規制の整備、リサイクル技術の社会実装が必要となります。
今回のIEA PVPSレポートでは、IEA PVPS Task 12に参加する各国のPVモジュールリサイクルの現状や技術開発動向がまとめられており、世界各国のPVリサイクルに関する制度や技術動向を比較できる内容となっています。
国内では、リサイクル推進に向けた制度化や多くの企業による太陽光パネルリサイクルの事業化が進んでいますが、世界各国の制度・技術動向を比較することで、国内のリサイクルシステムの高度化や海外展開につながることが期待されます。