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愛媛県:太陽光パネル3R推進スキーム構築に係る調査検討業務

愛媛県では、2030年代以降に予想される使用済太陽光パネルの排出増加に対応するため、関係事業者と連携した県独自の循環スキーム構築を目指しています。
その一環として、適切な3R処理構築に向けた『太陽光パネル3R推進スキーム構築に係る調査検討業務』が実施され関連トピック、県内の太陽光パネルの実態調査、将来の排出量予測、3R推進に向けた課題抽出と誘導手法の検討などをまとめた調査結果として公表されています。

本調査業務では、県内関連事業者へのアンケートに基づく実態調査や、国で実施された調査結果との比較など、愛媛県の実状を踏まえた独自の分析結果が報告されています。
また、報告書の概要版が公表されており全体像が把握できるとともに、アンケート調査結果などの関連資料も公開されていることから、より詳細な内容を確認することも可能となっています。

本トピックでは、これら報告書の内容について概要を紹介していきます。

県内太陽光パネル実態等調査業務

愛媛県独自の太陽光パネル循環スキーム構築実証事業の実施に向け、県内における太陽光パネルの3Rの実態を把握のため、アンケート調査が行われています。

(引用元:愛媛県

アンケート調査対象ごとに分析・考察が行われており、廃棄時に最も重視されるのは処理費用であることが示されています。県内ではリサイクル費用と最終処分費用の差が小さいことから、コスト削減や効率化により3Rが選択されやすくなるとされています。
また、特に太陽光発電設備を設置している家庭向けの情報共有不足が指摘されており、リユースを含む情報提供や普及啓発が重要だとされています。

(引用元:愛媛県

太陽光発電事業者/太陽光発電施設設置自治体

アンケートに回答のあった太陽光発電事業者・設置自治体の90%以上が、太陽光パネルの排出時期は未定(または10年以内に排出予定が無い)と回答している一方で、事業者の約3/4が事業期間終了後も発電事業を継続する意向を示しています。

(引用元:愛媛県

排出費用の積立を行っている事業者・自治体も39.6%(※)に留まっています。アンケートに回答のあった事業者の77.4%が20kW以上であるため、廃棄等費用積立制度では別の追加的なリサイクル費用の積立を意味するのかは不明ですが、回答結果からは半数以上が積立を行っていないと認識していることになります。
また、事業途中での修繕・撤去・処分や損害賠償等に備えた保険への加入率をも60%程度に留まっており、発電事業のライフサイクル全体を通じた出口管理やリスク対策に向けた資金面での備えに課題があることも示唆されます。

(引用元:愛媛県

太陽光発電設備設置家庭

太陽光パネルの排出予定が未定と回答した割合は70.1%、10年以内に廃棄の予定がないものも含めると95%が排出時期が未定となっています。
また、廃棄費用の準備や積立を行っていない家庭が89.5%となっており、住宅向け太陽光発電設備での廃棄に向けた準備不足が明らかになっています。

(引用元:愛媛県

産業廃棄物処理業者

愛媛県内の太陽光パネルリサイクル事業者3社(中間処理事業者)へのヒアリングによると、年間処理能力は3社合計で4,845トン程度となっています。一方で、現在の年間処理実績の合計は20.5トンに留まっており、処理能力に対して0.4%程度しか稼働しておらず、環境省などの調査と同様に現在の稼働率が著しく低い結果となっています。

県内での太陽光パネルのリサイクル費用は約3,000~4,000円/枚であるものの、管理型最終処分場への埋立費用は本州と比べて割高な地域特性から4,000円/枚(収集運搬費を除く)となっています。
このため太陽光パネルの3R推進に当たっては、経済的支援よりも普及啓発の取組みが重要である可能性が指摘されています。

県内太陽光パネル排出量予測等業務

愛媛県内の太陽光発電設備の導入推移の整理と、それに基づく排出量の予測と分析が行われています。

太陽光パネル設置状況の推計

本調査業務では、愛媛県内の地域別の太陽光パネル設置状況が推計されています。
FIT/FIP(1549.3MW)と非FIT/FIP(28.3MW)の合計で1,578MW(250W/枚で換算すると620万枚)、導入量のピークは2015年度で約337MWと推計されています。

(引用元:愛媛県

推計に際しては、FIT/FIP電源に関しては過積載率などの実際のパネル出力を考慮した設置状況、非FIT/非FIP電源に関してはの全国の状況を参考に、導入状況が推定されています。

太陽光パネル排出量の予測

本業務では、国の排出量推計モデルを参考に『故障要因、損益分岐、FIT満了』の3つを排出要因として将来的な太陽光パネルの排出量が推計されています。
パラメータ設定に関してはアンケート調査の結果を反映し、愛媛県の地域特性として塩害の影響を考慮した2つのシナリオでの排出量予測が行われています。

(引用元:愛媛県

シナリオ1ではパネル排出量のピークが二度現れており、2035年で約4,200トン/年、2055年頃に約10,800トン/年と推計されています。2035年のピークはFIT満了が主な排出要因とされており、2055年頃については出力劣化率が20%を超えることが要因と分析されています。
また、塩害の影響を考慮したシナリオ2では2035年で約5,000トン/年、2つ目のピークが2042年で約7,500t/年となり、ピークが13年早まると推計結果が示されています。

(引用元:愛媛県

本分析では、国が実施した排出量推計モデルを参考にしつつ、推計に用いたパラメータの条件が見直されています。
各モデルの条件の違いや推計結果についての比較評価も行われており、排出量推計に関する考え方が整理されています。

なお、国による全国推計結果においても排出量が二つのピークを持つ傾向や2050年以降にピークが存在するなど、愛媛県の推計結果も全国推計と同様の傾向を示すものと分析されています。

(引用元:愛媛県
地理的な条件に基づくリサイクル施設の適地エリアの検討

報告書本文および概要版では触れられていませんが、資料編ではリサイクル処理施設の適地エリアに関する概略検討が実施されています。

適地エリアの検討では、事業計画認定情報における太陽光発電設備の位置情報と影響項目(土地利用、洪水、土砂災害、環境保全区域など)の地理空間情報を重ね合わせて表示し、愛媛県全域における地域区分の整理と地域別に適地エリアがプロットされています。

(引用元:愛媛県

なお、本検討は地理情報を基にした適地エリアの目安の整理であり、現地調査や関連事業者等へのヒアリングは行っておらず、排出量のピークに合わせた施設数の検討など必要だとされています。

太陽光パネル設置者に対する3Rの課題抽出・誘導手法検討業務

太陽光発電事業のライフサイクルにおける各段階別の課題を整理するとともに、愛媛県の実態や県内事業者へのヒアリング結果も踏まえて太陽光パネル3Rに関する課題が整理されています。
また、リサイクル関連法や太陽光発電設備のリサイクル制度などを整理した上でリサイクルへの誘導方策がまとめられており、次年度以降の実証事業構想が提示されています。

太陽光パネルの3R推進スキームにおける課題と整理

太陽光発電のライフサイクルの各段階(フェーズ)別の課題を、環境省の報告書や審議会資料、関係者へのヒアリング結果を基に抽出・整理されています。
「解体・運搬」、「リサイクル(中間処理)」、「リユース」のフェーズで特に課題が多く、撤去から再利用・再資源化の段階で問題が集中しており、事業者の経験不足、大量廃棄の見込みや排出時期の不確実性、パネルの多様性などが主な要因とされています。

  • 解体・運搬:許可業者や処理能力の不足による排出停滞、住宅用での個人負担の大きさ、リユース可能性の認知不足
  • リサイクル(中間処理):製品情報の不足、保管量の制限、排出時期の不透明さ、再生材の需要不足、再生材の品質確保
  • リユース:リユースパネルの安全性や品質・保証の問題、新品価格下落による競争力低下

現在の愛媛県の太陽光パネルの3Rでは、中間処理施設が県内中東部(中予・東予地域)に立地していることから、県南西部(南予地域)で発生した使用済パネルは運搬費用が割高となり、リサイクル推進の阻害要因となることが指摘されています。
一方で、県内ではリサイクル費用と埋立処分費用の差が小さく、リサイクルの意義を周知することでリサイクル率向上が期待できるとされており、排出時の手間を削減するワンストップ型の仕組み整備も適正処理の促進につながると考えられています。

(引用元:愛媛県

国や地方公共団体が公表している資料を参考に太陽光パネル3Rの推進スキームが整理されており、想定されるプラットフォームのモデル案が提示されています。
また、リサイクル・リユースへの誘導する方策として、他のリサイクル関連法や推進を動機づける手法についても整理されています。

(引用元:愛媛県
(引用元:愛媛県
実証事業構想検討

太陽光パネルの3R推進スキームにおける課題やプラットフォーム案の整理を踏まえ、関係事業者と連携した愛媛県独自の循環スキーム構築に向けた実証事業構想が検討されています。
対策の緊急度が高いものについて対応策の効果検証を行うこととされており、実証事業として5つの取組みが想定されています。

  1. プラットフォームの構築実証
  2. パネル解体・診断・運搬等の実証
  3. 効率的・経済的な回収モデルの検討
  4. リユースパネルの販路開拓の検討
  5. 太陽光パネル3R普及啓発事業
(引用元:愛媛県

愛媛県では、2026年度に『太陽光パネル3R推進スキーム構築業務』を実施するとされており関連トピック、本報告書で提案された実証事業についても、今後実施・検証が進められるものと考えられます。

まとめ

今回紹介した『太陽光パネル3R推進スキーム構築に係る調査検討業務』報告書では、愛媛県が関係事業者と連携した県独自の循環スキーム構築に向けての基礎的な調査・検討結果が整理されています。県内ではリサイクル費用と埋立処分費用の差が小さいことから、情報発信の強化によるリサイクルへの誘導や、地域特有の課題への配慮が必要だと指摘されています。

また、本報告書では環境省などの過去の報告書や推計手法などを整理した上で地域特有の分析が行われているほか、リサイクル関連法や他自治体の取組み事例も整理されており、他自治体が検討を進める上でも参考になる内容となっています。

愛媛県では今後も太陽光パネルの3R推進スキーム構築に向けた取組みが進められることになっており、実証事業の内容や成果が注目されます。

参考資料