太陽光パネルリサイクルの情報を掲載しております。

NEDO:「太陽光発電主力電源化推進技術開発」分科会の資料公表

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、『太陽光発電主力電源化推進技術開発』が2020~2024年度の5年間のプロジェクトとして実施され、終了時評価での分科会資料が公表されています。

本プロジェクトでは太陽光パネルリサイクルに関わる項目として、『太陽電池モジュールの分離・マテリアルリサイクル技術開発』、『リサイクル関連の動向調査』が行われており、関連して公開されている内容の概要を紹介していきます。

プロジェクトの背景と目的(再掲)

2012年以降のFIT制度により太陽光発電導入量は急増したことで、普及後の社会を支える戦略が必要となっており、導入拡大に伴う安全性や廃棄物等の懸念も指摘されています。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、長期安定的な主力電源として再生可能エネルギーが位置付けられており、太陽光発電の更なる導入が必要となる一方で大量導入に向けた課題に取り組む必要性も指摘されています。

(引用元:NEDO

NEDOでは大量導入社会に向けた現状分析、課題抽出、課題解決の方策を検討し、今後の技術開発の指針として『太陽光発電開発戦略2020(NEDO PV Challenges 2020)』が策定され、開発戦略を実現するために5年間でプロジェクトが遂行されています。
また本プロジェクトは、過去2014年から実施されてきた技術開発の後継且つ包括的な事業として位置づけられている様です。

(引用元:NEDO

太陽光パネルのリサイクルに関する研究開発項目とアウトプット目標

太陽光パネルのリサイクルに関してはリサイクル技術開発や動向調査が行われ、以下のアウトプット目標が設定されていました。

  • 太陽電池モジュールの分離・マテリアルリサイクル技術開発
    • 分離処理コスト3円/W以下、資源回収率80%以上の分離技術を有する実モジュールサイズの実証プラント構築
    • 太陽電池モジュール由来の回収物(ガラスやセルシート等)のマテリアルリサイクル技術の開発
  • リサイクル関連の動向調査
    • リサイクルに関わる調査結果を、太陽電池モジュールの分離・マテリアルリサイクル技術開発へフィードバック

研究開発での主な成果

実施された各研究開発テーマにおいて、それぞれの主な成果が報告されています。

  • 太陽電池モジュールの低温熱分解法によるリサイクル技術開発(トクヤマ)
    • 低温熱分解法の確立およびリサイクル工程の完全自動化を実現、分離処理コスト2.06円/W、資源回収率88%を達成
    • フロート板ガラス向けリサイクル実証試験に必要な処理コスト3円/Wを達成するためには、15枚/hrを目標とし、最適な熱分解処理するための値を決定、処理時間を短縮
    • 樹脂を熱分解した熱エネルギーを有効利用し、平均消費ガス量を約70%減少させることを確認
  • 結晶シリコン及びCIS太陽電池モジュールの低環境負荷マテリアルリサイクル技術実証(ソーラーフロンティア)
    • 太陽電池モジュールに対応したパネルセパレータ技術を確立、割れカバーガラスモジュールにも対応する加熱スクラッチ方式を開発
    • セルシートを構成するマテリアル分離をターゲットとした薄流型湿式選別機を開発、CIS回収のためのエッチングプロセス開発および塩化揮発法によるマテリアルリサイクルを検討
    • 年間200MW規模の処理施設(稼働率85%)にて、マテリアルリサイクル率92%、売却益を含む分解処理コストを2.7円/Wと試算
  • 太陽電池モジュールのリサイクルに関わる調査(三菱総合研究所)
    • 太陽電池モジュールのリサイクルに関わる国内の技術開発動向、政策動向、実施事例、および災害時のリサイクル状況調査
    • 太陽電池モジュールのガラスの再利用の状況調査として、①ガラスのマテリアルフロー情報の更新、②ガラスリサイクル技術の調査、③アンチモンの除去に関する調査・検討、④ガラスの受入条件を調査
    • 使用済太陽光発電設備の排出量予測の精緻化
  • スマート回収モデル調査 (公益財団法人福岡県リサイクル総合研究事業化センター、2022年度/2023年度のみ)
    • 太陽光発電設備から効率よく廃棄PVモジュールを回収する『スマート回収モデル』の評価・システム改善
    • 『スマート回収モデル』での回収による経済合理性評価、LCA評価
    • 住宅用太陽電池モジュールへの『スマート回収モデル』の適用可能性の調査
  • 太陽電池モジュールのリサイクルに関するLCAの調査(みずほリサーチ&テクノロジーズ)
    • リサイクル技術のLCA評価を実施、リサイクル処理によるCO2排出量の削減を確認
    • 海外のリサイクル技術の動向調査、国内外の事例調査を通じリサイクル推進に向けた技術的な課題の整理

今回の報告資料(事業原簿)には、各研究開発における詳細は公表されていませんが、中間評価の分科会や成果報告会などの機会を通じて一部発表されているものもあります。

まとめ

NEDOにより2020年度~2024年度に実施された技術開発プロジェクト『太陽光発電主力電源化推進技術開発』の5年間の成果が資料として公開されています。
これらの成果は、実際のリサイクル技術に活用されているものや、太陽光パネルのリサイクル義務化に向けた議論での資料としても活用が進んでいます。

今後、本技術開発プロジェクトの成果が広く周知・活用される必要から、更なる資料の公開や汎用技術として展開されていくことが期待されます。

参考資料