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太陽光発電の資源利用量と環境への影響

(公開日:2022-03-11)
(更新日:2022-05-04)

一般的に再生可能エネルギーは発電時に化石燃料などを燃焼する必要が無く、二酸化炭素の排出がないと考えられています。しかし資源の採掘から製造、廃棄までのライフサイクルを通してのCO2排出量が低減できていることが重要となります。
また再生可能エネルギーは化石燃料や原子力などに比べエネルギー密度が小さいため、同じ電力を得るのに規模を大きくする必要があります。これは多くの資源が消費されることであり、廃棄物が増えるなど持続可能性を考える上で無視できません。

今回のコラムでは、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーや各種発電方式でのCO2排出量や資源利用量など、各種資料・データを2回に分けて紹介していきます。

<データ・資料に関しての注記>
以下で紹介するデータ・図表等は各発行元の資料によるものであり、それぞれ異なる結果となっています。

それぞれの前提条件や数値の整合性は確認しておらず、全体的な傾向の把握を目的として掲載しています。
またあらゆる地域や個別の事例について、以下で紹介するデータ等が該当するものではありません。

エネルギー密度

太陽光発電などの再生可能エネルギーと、従来の火力発電や原子力発電の環境への影響を考える上で、自然エネルギーのエネルギー密度の違いが重要な要因となります。

発電方式ごとのエネルギー密度
発電方式ごとのエネルギー密度(引用元:Science Direct
発電方式ごとのエネルギー密度と土地面積
発電方式ごとのエネルギー密度と土地面積(引用元:Master Resource

自然エネルギーは化石燃料などに比べて原理上の制約でエネルギー密度が小さく、同じ発電量を得るためにより多くの土地・資源が必要となることが明らかです。
このため資源だけでなく、環境や人間の社会活動(景観や土地利用など)への影響も大きくなると考えられます。

発電方式による原材料の使用量

発電方式の違いによる資源の利用量に関して、米国エネルギー省(DOE, United States Department of Energy)がこれらを比較した資料を公表しています。

発電方式による材料使用量の比較(DOE)
発電方式による材料使用量の比較(引用元:DOE
発電方式による材料使用量の比較(Forbes)
発電方式による材料使用量の比較(引用元:Forbes

本資料によれば、火力発電(石炭、天然ガス)や原子力発電が600~1,200トン/TWhの資源を必要とするのに比べて、水力・風力・太陽光発電などの再生可能エネルギーでは10,000~14,000トン/TWhと10倍程度の資源が使用されていることになります。
再生可能エネルギーの中でも水力・風力がコンクリート(基礎や筐体等)の割合が多いのに対して、太陽光発電ではセメントやガラス、鉄鋼、その他材料など種類や資源量そのものも多い傾向にあるようです。

上記の数値が個々の発電所で一様に適用できる訳ではないと考えられますが、太陽光発電設備に使用される資源量の特徴が理解できます。

鉱物資源の必要量

再生可能エネルギーによる発電方式が資源を多量に要する特徴を見てきましたが、鉱物資源についての発電方式毎に比較したデータがIEAやUNECEより公表されています。
これらのレポートによれば、あらゆる発電方式で銅やアルミニウムが多く使用されており、風力や太陽光発電での出力あたりの使用量(kg/MW)が顕著です。発電設備の稼働率を考慮すると、特に太陽光発電については発電量あたりの使用量(kg/MWh)は更に多くの資源が必要とされています。

発電方式による鉱物資源の使用量比較(IEA)
発電方式による鉱物資源の使用量比較(引用元:IEA
発電方式による鉱物資源の使用量比較(UNECE)
発電方式による鉱物資源の使用量比較(引用元:UNECE

希少資源については太陽光発電では銅とシリコンの使用量が多く、今後も使用量の増加が見込まれています。
一方でフィンガー電極に使用される銀の使用量は、生産コストへの影響も大きいことも影響してか、増加が幾分緩やかだと予測されています(関連トピック)。

太陽光発電の主要鉱物資源の使用量予測(IEA)
太陽光発電の主要鉱物資源の使用量予測(引用元:IEA

急激に増加する再生可能エネルギーの需要に対して、供給側の開発が進まないことで需給バランスに圧力がかかることが考えられています。
将来的な予測に関しては様々な意見があるものの、資源需要を満たす投資拡大の必要性、開発に伴う環境への影響、鉱物資源の地域的な偏在などのリスクも指摘されています。

主要鉱物資源の需要供給予測(IEA)
主要鉱物資源の需要供給予測(引用元:IEA
主要鉱物資源の採掘・精製国(IEA)
主要鉱物資源の採掘・精製国(引用元:IEA

太陽光発電設備のライフサイクルでの影響

太陽光発電設備(シリコン系太陽電池モジュール)のライフサイクルでの環境への影響では、特に上流工程であるシリコンの原料やセルの製造で鉱物資源・水資源・気候変動などへの影響が大きいことが分かります。

シリコン系パネルのライフサイクルでの環境への影響度(引用元:UNECE
アジア地域別の太陽電池モジュール製造状況
アジア地域別の太陽電池モジュール製造状況(引用元:DOE

太陽光パネルの製造は多くのエネルギー・資源が必要なエネルギー集約型産業であり、資源・エネルギーのアクセスが容易な一部の国・地域に生産が偏在している要因の一つとも考えられます。

生態系や人体への影響

UNECEのレポートでは、発電方式によるライフサイクルにおける生態系への影響や人体への影響に関してもまとめられています。

生態系への影響(UNECE)
気候変動を除くライフサイクルでの生態系への影響(引用元:UNECE

本資料によれば、原子力発電や風力発電が生態系への影響が小さいと評価されており、太陽光発電は土地利用への影響が大きいとあります。

また人体への影響という点でも、再生可能エネルギーは化石燃料由来の発電と比較して低い傾向にあります。

人体への影響(UNECE)
ライフサイクルでの人体への影響(引用元:UNECE

まとめ

発電時に二酸化炭素の排出がない太陽光発電(再生可能エネルギー)は、一方で自然エネルギーに由来するため多くの資源や土地を必要とするため、環境や社会との調和や将来的に大量の廃棄物への対策が必要となります。

太陽光発電は発電時にCO2を排出せず化石燃料由来の発電方式に比べて気候変動への影響は少ないものの、資源採掘や土地利用などの環境への影響は無視できるものではありません。太陽光発電を持続可能なものにするためにも、適正なリサイクルを行うことで資源循環と環境負荷低減の技術が必須となります。

参考資料