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海外ニュース:NREL、太陽光パネルリサイクルにおける社会的要因の役割

NERLの研究グループが発表した論文「Role of Social Factors in Success of Solar Photovoltaic Reuse and Recycle Programs」がNature Energy誌に掲載されています。本論文では太陽光パネルのリサイクルが「技術的には実現可能なソリューションであっても、消費者がそれを実行するインセンティブがなければ、うまくいかない」ことを示唆しており、消費者の意識や態度を循環型経済の研究や解決策で考慮しなければならないと指摘しています。

“Consumer awareness and attitude are an important piece of the puzzle that must be considered in PV circular economy research and solutions,” said Julien Walzberg, lead author of a new article titled “Role of Social Factors in Success of Solar Photovoltaic Reuse and Recycle Programs” in Nature Energy. “A solution may be technically feasible, but if there’s no incentive for consumers to do it, it won’t work.”

引用元:Teck Xplore

本研究では、エージェントベースモデル(ABM)と呼ばれるライフサイクルに関わる複数のアクターと社会的要因をモデル化し、機械学習により感度分析が実施されています。4種類のエージェント(PV所有者、設置者、リサイクル業者、メーカー)と5つの処分方法(修理、再利用、リサイクル、埋め立て、保管)を定義し、各エージェントの行動に与える様々な要因(埋立費用や処分費用などの経済性、意思決定に関わる周囲の影響など)が考慮されています。

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引用元:Nature Energy

本研究によれば、太陽光パネルの循環利用に最も重要なのは、①初期リサイクルコスト、②埋立コスト、③学習効果であり、これらのパラメータの組み合わせることで最良の結果が得られるとあります。

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引用元:Nature Energy

現在国内で太陽光パネルのリサイクルに直接影響を及ぼす規制や補助金は大きく以下3点があげられます。

  • 管理型最終処分場への埋立て(環境省ガイドライン
  • FIT認定事業に対しての廃棄費用外部積立
  • 環境省、自治体によるリサイクル設備導入補助金等

管理型処分場への埋立は安定型に比べ費用がかかること、廃棄費用の積立は将来的なリサイクル費用の負担軽減につながるため、リサイクル促進に好影響を与えると考えられます。一方で設備導入に関する補助金は、初期導入費用を抑えることにより参入企業(リサイクル設備の数)を増やすことにつながりますが、『学習効果』の改善にはマイナスとなる可能性があると考えられます。また現在、『初期リサイクルコスト』を抑える制度はないことから、本研究の示唆するところではリサイクル普及にインパクトを与えることができていないとも考えられます。

本研究は米国における状況をモデル化しているため、日本の事情に合わせた場合には異なる結果が得られる可能性はあります。一方でEBPM(Evidence Based Policy Making、証拠に基づく政策立案)や行動経済学の視点が政策立案に求められるようになっており、太陽光パネルのリサイクルを促進するために現在の政策が本当に最適なのか検証される必要があると考えられます。

本論文にはモデル化の方法が公開されており、各種パラメータを変更することで各国・地域の状況に応じたシミュレーションができるとあります。国内ではこれまでリサイクル技術の研究開発に重点が置かれてきましたが、今後経済性や社会的要因を考慮した研究と、それら結果に基づく政策が求められます。

参考資料