環境省では、環境産業の市場規模・雇用規模等の推計結果をまとめた「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」を毎年公表しており、令和6年度(2023年調査結果)が公表されています。
本調査では環境産業の市場規模や雇用規模などに関して、これまでの実績(過去推計)と将来推計がまとめられており、今年度はグリーン経済の将来推計の中で太陽光パネルリサイクルの市場規模がまとめられています。
本トピックでは、環境産業全体の市場規模の概観と太陽光パネルの市場規模推計に関して紹介します。
環境省では、持続可能な経済成長・社会の発展に向けて、環境と経済との相互関係に着目した情報の整備・発信を行うこととされています。
国内環境産業市場規模等の2023年推計および2000年までの遡及推計、参考値として2050年までの国内環境産業の将来市場規模の推計が実施されています。
国内環境産業は2000年以降、特に地球温暖化対策分野を中心に規模が増加しており、2023年の市場規模等は以下の様に推計されています。
「廃棄物処理・資源有効利用」の分野では近年市場の拡大が続いており、2023年には64兆3,373億円と環境産業の約半分を占めています。
日本の全産業のうち環境産業が占める割合は2000年以降増加を続けており、2023年には11.3%となっています。
環境産業の付加価値額の伸びはGDP成長率を上回ってる成長産業となっています。
廃棄物処理・資源有効利用分野は環境産業の成長を牽引しており、その中でも「廃棄物処理・リサイクル設備」が大きく増加しています。
2050年にかけて環境産業の市場規模は拡大傾向を続ける、146.8兆円まで成長すると想定されています。
なお、本推計は既存産業の変化のみを対象としており、再生可能エネルギー・蓄電池等の加速度的な普及など新産業の創出により環境産業市場が本推計を上回る成長を遂げる可能性があるとされています。
2050年のカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー拡大等の目標に向けて、環境産業の市場規模の拡大が期待されています。
2030年以降、環境産業の市場規模拡大が緩やかな増加にとどまっている予測になっているものの、市場が未形成なグリーン経済に関して個別に整理して市場規模の予測がまとめられています。
将来の太陽光パネルリサイクルの市場規模に関しても、環境省やNEDOなどの調査結果に基づき市場規模の推計が行われています。
太陽光パネルリサイクルの市場規模をリサイクル費用とパネルに含まれる有価資源の売価により算出し、2050年に491億円になると予測されています。
これまでNEDOや環境省などで将来の太陽光パネルの廃棄量に関する推計は発表されてきましたが、今回の報告書では初めて『市場規模』として公表されました。
排出量やリサイクル費用など不確定な要素は多く、今後のリサイクル制度や技術動向によって市場規模は大きく変動する可能性があります。
しかし、将来の市場規模が示されたことは、今後参入を検討する企業にとって重要なベンチマークになると考えられます。
一方で、再エネ特措法による廃棄等費用の積立期間と推計された市場規模のピークに数年以上のタイムラグがあります(関連トピック)。
今後も物価や金利が上昇する中で、積立金の実質的な目減りが生じるリスクに目を向けることも必要だと考えられます。