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廃棄等費用の積立制度から考える市場規模と課題

(公開日:2022-06-30)
(更新日:2026-09-18)

2022年4月1日に改正される再エネ特措法に基づき、FIT・FIP認定された10kW以上の太陽光発電所で廃棄等費用の積立が制度化されました。
これらの廃棄等費用積立金は事業終了時において発電所の撤去・廃棄に要される費用となることから、将来の太陽光パネルリサイクルの市場規模として推計することができます。

今回のコラムでは、10kW以上のFIT認定事業を対象にした将来のリサイクル市場の規模推計と課題を検討していきます。

FIT認定事業の廃棄等費用の積立金額の推計方法

資源エネルギー庁のWEBサイトに、FIT認定事業の詳細(発電出力、認定年度、運転開始・調達期間終了年月)が公表されています。
また廃棄費用積立基準額についてはガイドラインに記載があり、これら資料を用いて積立金額の推計を行うことができます。

廃棄等費用積立てガイドラインについては、以前のコラムで概要を紹介しています。

上記の資料を基に、ガイドラインに規定された条件(想定設備利用率、解体等積立基準額)に基づき各発電所における廃棄等費用積立額を試算し、FIT終了年ごとに集計します。
20kW未満のFIT認定事業については個別の発電所についての情報が公表されていないため、『エリア別の認定及び導入量』として公開されている情報から推計します。

廃棄等費用積立金額の算出・集計方法
図2_解体等積立基準額(2022-Apr)
廃棄費用の外部積立額(引用元:資源エネ庁

外部積立期間10年間の拠出額は、1MWのメガソーラーの場合以下の通りに計算されます

  • 計算式:(10年×365×24)×(発電所定格出力×設備利用率)× 解体等積立基準額
  • 2012年度認定:約1,703万円(設備利用率12.0%、基準額1.62円/kWh)
  • 2020年度認定:約994万円(設備利用率17.2%、基準額0.66円/kWh)

廃棄等費用積立金額の推計

廃棄等費用積立はFIT終了前の10年間が対象であり、調達期間終了年で積立が満了したものとして集計したものを示します。

廃棄等費用積立額の推計(事業計画認定情報等からPVリサイクルcom作成)

FIT認定がピークだった2014年~2025年および2020年稼働開始のピークの20年後に積立額が多くなっており、ピークで年間約1,500億円、累計で8,900億円程度の規模になると試算されます。これに加えて住宅用などの10kW以下のFIT認定されたものやPPAモデルなども含めると、市場規模はさらに大きいと考えられます。
なおFITによる売電期間20年の終了後に直ちに発電所が撤去・廃棄されることは想定されておらず、これらの積立金がすぐに撤去・廃棄に供する費用とは考えにくいものの、廃棄・リサイクル市場の規模感を把握することができます。

(※2040年にFIT調達期間終了の集中については、別途詳細分析を行う予定です)

2012年~2026年のFIT認定事業の積立金推計額を、都道府県ごとに集計したものが下図となります。

廃棄等費用積立額の地域別推計(事業計画認定情報等からPVリサイクルcom作成)

FIT認定の地域差が大きいことから、将来大量廃棄が始まった際の廃棄処理・リサイクルの需要も地域的な偏りを考慮する必要があることを示しています。

撤去・廃棄費用からの市場規模の推計

FIT認定事業が20年間が終了するのは早くとも2030年代前半であり、これまで太陽光発電所が実際に撤去・廃棄された事例はごく僅かだと考えられます。
一部の太陽光発電所では、水害や豪雪被害などで太陽光パネルの撤去やリパワリングによる大規模なパネル交換が行われた事例があるものの、撤去等費用の実績に関する統計やデータは、現時点で公表されているものは確認できていません。

撤去・廃棄費用の試算として、経済産業省が廃棄等費用積立の制度化に際して事業者に対して撤去・廃棄費用の調査を実施したものがあります。

太陽光発電設備の廃棄等費用の集計結果(引用元:経産省)

一定の条件において、3種類のケース(工法)で撤去・廃棄等に要する費用が試算されています。

  • コンクリート置き基礎
  • スクリュー杭基礎
  • 基礎は撤去せず残置

アンケート結果の中央値と廃棄等費用の積立基準額を比較すると、概ね積立費用と実際に必要となる費用がバランスされている様に見受けられます。

工法別の廃棄費用と積立基準額の比較(経産省資料等からPVリサイクルcom作成)

上記の想定額を用い、すべてのFIT認定事業について撤去・廃棄費用を推計したもの示します。

撤去・廃棄費用の推計値(事業計画認定情報等からPVリサイクルcom®作成)
撤去・廃棄費用の推計値(事業計画認定情報等からPVリサイクルcom®作成)

想定した条件(基礎仕様、撤去有無)により推計値には、大きな違いがあることが分かります。
廃棄等費用積立額は『スクリュー杭基礎』と『コンクリート基礎』での条件における撤去・廃棄費用の推計値の間と推計できますが、個別の発電所で必要となる撤去・廃棄費用が異なることは容易に推察されます。

太陽光発電所の仕様・条件(過積載率、傾斜やアクセス等の設置条件、地域ごとの撤去工事費用など)により本来はそれぞれで適切な費用水準があると考えられます。発電事業者は積立てた廃棄費用のみで必ずしも撤去・廃棄費用を賄えない可能性を認識する必要があると考えられます。

現状のリサイクル費用実績から推計した場合

2026年6月5日に『太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律』が公布され、2027年末までに施行される予定となっています。
廃棄等費用積立に加えてリサイクル費用が将来的に必要になり、廃棄・撤去費用として規模が大きくなることが想定されます。

環境省が2021年に実施した『使用済太陽電池モジュールのリサイクル等の推進に係る調査業務関連トピック』にて、現在の太陽光パネルのリサイクル費用(中間処理としての受託費用)が調査されています。
太陽光パネル1枚当たり2000円~4000円であり、中央値は3150円/枚となっています。

リサイクル費用に関する調査結果
(引用元:環境省

太陽光パネル1枚当たりの出力を250W/枚(前述の経産省調査報告書の試算値と同条件)とした場合、パネル処理のリサイクル費用は12,600円/kWとなり、前項で用いた撤去・廃棄費用での試算と大きな差があります。

廃棄等費用の集計結果と現状のパネル処理費用の比較(経産省資料等からPVリサイクルcom®作成)

現状のパネル処理費用を用いて撤去・廃棄費用を推計した場合、最大で年間約3,000億円、累計で1兆5千億円規模にまで膨らむと試算でき、廃棄等費用積立額を大きく上回る水準となる可能性があります。

現状のパネル処理費用による撤去・廃棄費用の推計値(事業計画認定情報等からPVリサイクルcom®作成)
現状のパネル処理費用による撤去・廃棄費用の推計値(事業計画認定情報等からPVリサイクルcom®作成)

不確実な廃棄費用をどのように捉えるべきか?

廃棄等費用積立額の試算と実際に撤去・廃棄にかかる費用推計を整理しましたが、計算根拠となる費用の根拠によっては推計結果に大きな違いが生じる結果となり、将来の市場予測や事業計画などの参考として扱うには注意が必要です。
このような結果になった背景と、どのような対策や検討が必要かの議論が求められます。

  • モデルケースでの撤去・廃棄費用基準額と個別の太陽光発電所の条件の相違
     ⇒ 積立金だけで、必ずしも全ての発電所で撤去・廃棄費用が賄えない可能性もある
  • リサイクル推進への対応
     ⇒ 解体等費用が想定していないリサイクル費用を、どのように想定するか?
  • 将来の技術水準・費用の見込み
     ⇒ 将来どの程度までリサイクル費用が下がるか?
     ⇒ リサイクル費用の低下により、中間処理の事業採算性低下への影響は?
  • 物価上昇や社会情勢の影響
     ⇒ 人口減少・高齢化・過疎化による人手不足によるコスト増加の影響は?
     ⇒ 燃料価格上昇の影響や、EV化による運輸業界そのものの変化は?
     ⇒ 積立金が物価上昇に対応できるのか?※外部積立金の取戻しには利息は考慮されていない
  • 排出ピークによる処理能力への影響
     ⇒ 排出ピークが集中する際の、処理費用への影響は?
  • FIT20年終了後も発電事業を継続の必要性
     ⇒ 撤去・廃棄費用を確保も視野に、発電事業を継続・延命を検討すべきか?

将来の撤去・廃棄費用を担保するために積立制度は2022年7月から順次適用されていますが、リサイクル推進が求められることから、将来必要となる廃棄・リサイクル費用が上振れすることが想定されます。
発電事業者は制度化された廃棄等費用の積立で満足することなく、実際にどの程度の費用が必要であり、どの様な不確実性があるのかを積立と並行して検討する必要があると考えられます。

発電事業者自らが将来の撤去・廃棄費用に関するリスクを低減させることは必要ですが、国や行政などによる精度の高い調査や情報収集など予見性を高める対策が求められると考えられます。

まとめ

廃棄等費用の外部積立制度が対象とする10kW以上のFIT認定事業の情報から、将来のリサイクル市場規模の推計を行いました。

2030年代に年間1,000億円を超える規模の撤去・リサイクル市場が予想されますが、地域の偏りや規模の不確実性が高いと考えられます。
加えて、2026年6月に公布された「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」により、廃棄等費用の積立だけでは賄えないリサイクル費用の負担が今後現実のものとなることから、市場規模はさらに上振れする可能性があります。

静脈産業に関わる事業者にとっては将来の事業機会である一方で、発電事業者側は将来必要となる撤去・リサイクル費用を確保することが求められます。
地域社会との調和や資源循環の実現などに向けて適正なリサイクルを進める必要性は今後も高まるため、将来の撤去・廃棄に関わる不確実性を低減する取り組みが発電事業者や国・行政の双方に必要だと考えられます。

参考資料