環境省『中央環境審議会 循環型社会部会 太陽光発電設備リサイクル制度小委員会』と経済産業省『産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ』合同会議の第10回が、2026年1月23日に開催されました。
当初、2025年の通常国会へのリサイクル義務化法案の提出が予定されていましたが、他のリサイクル制度との費用負担の整合性や、埋立処分とリサイクルとのコスト差などについて、法制化に向けた合理的な説明が難しいとして制度案の見直しが行われることとなっていました。
今回の検討会ではリサイクル義務化に向けた議論を再開するにあたり、これまでの検討経緯や課題を整理するとともに、太陽光パネルのリサイクルを推進する上での基本的な考え方について議論が行われました。
2012年のFIT制度開始以降、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入が進展し、電源構成に占める再エネ比率は2011年度の約10%から2023年度には20%超へと倍増しました。さらに第7次エネルギー基本計画では、2040年度の電源構成における再エネ比率を4~5割程度(うち太陽光発電は23~29%)とする見通しが示されています。
一方で、太陽光発電の導入拡大に伴い、不適切な管理に対する地域の懸念や使用済太陽光パネルの適正処理への対応など、今後の導入拡大に支障を来しかねない課題への対応が求められています。
太陽光パネルのリサイクル義務化に向けた制度設計については2024年9月から検討が進められ、2025年3月に『太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について』が取りまとめられました(関連トピック)。
当初は2025年の通常国会への法案提出が予定されていましたが、同年5月に浅尾環境大臣(当時)が国会提出を見送る考えを示し(関連トピック)、同年8月にはリサイクル費用負担の在り方や他リサイクル制度との整合性などを理由に、法案の抜本的な見直しが必要との認識が示されています(関連トピック)。
その後2025年10月に発足したの高市政権のもとで、高市首相および石原環境大臣は、太陽光発電設備の秩序ある開発に向けた取組み強化とあわせて、太陽光パネルのリサイクル義務化を目指す意向を表明しています(関連トピック①、関連トピック②)。
2030年代後半以降に見込まれる使用済太陽光パネルの大量廃棄に伴い、最終処分量の減量および資源の有効利用を図る観点から、リサイクルの推進が必要とされています。一方で、現時点では以下の課題が指摘されています。
こうした課題への対応を進めつつ、『リサイクルの規制を段階的に強化』し、将来的には太陽光パネルの『幅広い排出者等』に対してリサイクルを義務付けることを目指すとされています。
今回新たに示された法制度案では、まず効率的なリサイクルが可能な多量の事業用太陽電池廃棄物の排出者等を対象に規制を導入し、技術開発や設備導入を通じて、リサイクル費用の低減および処理体制の整備を図るとしています。
その上で、2030年代後半の大量廃棄を見据え、将来的には規制の段階的な強化と対象範囲の拡大を進める方針が示されています。

本制度案においてリサイクルの対象とされるのは、『シリコン系太陽光パネル』です。
使用済太陽光パネルの最終処分量の減量がリサイクルの目的の1つであり、重量(容量)が大きく減量が困難なガラスのリサイクルが重要であることに加え、技術的・経済的なリサイクル可能性を考慮した判断であると説明されています。
一方、今後の普及が期待されるペロブスカイト太陽電池については、社会実装の進展や技術動向を踏まえつつ、今後も検討を進めるとされています。
新たな法制度案では、リサイクル義務化に向けて、以下の5つの基本的事項が整理されています。
使用済太陽光パネルの排出抑制およびリサイクルを総合的かつ計画的に推進するため、国が各主体の役割やリサイクル目標を定めることとされています。
また、全国的にリサイクルが選択される環境を整備する観点から、施設整備の促進に向けた方向性や、費用低減・技術開発等に関する施策の方向性が示される方針です。

使用済太陽光パネルの排出をしようとする者を『リサイクルの取組の主体』と位置付けた上で、その中でも効率的にリサイクルが実施可能な『多量の使用済太陽光パネルの排出等をしようとする事業者』に対して、リサイクルの取組みを義務付ける方針です。

なお、ここで想定される『排出者等』は、廃棄物処理法上の排出者を指すものではなく、解体工事の発注に際してリサイクル又は単純破砕・埋立処分の選択権限を有し、処分費用を負担する『実質的な排出者』を指します。
多量の使用済太陽光パネルの排出等を行おうとする事業者については、排出実施計画の策定および届出が求められ、国による審査を経ていない場合には、使用済太陽光パネルの排出等を行うことができないものとされています。
太陽光パネルの排出状況やリサイクル施設の所在には地域差が見込まれることから、全国的にリサイクル施設を増やすとともに近隣地域の事業者が回収できる仕組みを構築する必要性が示されています。
このため、一定水準以上のリサイクルを行える事業者を国が認定する制度を設け、施設が不足する地域への集約拠点の設置を促す方針とされています。

効率的な収集運搬の実現や排出事業者の経済的負担の低減、加えて比較的処理能力が小さいリサイクル施設における受入れの柔軟性を確保する観点から、本認定制度では集約拠点の設置の促進と合わせて、集約拠点(積替保管施設)やリサイクル施設での保管に関する基準の特例措置を設けることも検討されています。
一般的に製造業者は製品に関する情報を最も多く保有する立場にあり、使用済太陽光パネルの排出抑制とリサイクルの容易化・費用低減の促進で重要な役割を果たします。
このため、太陽光パネルの製造業者(輸入業者及び販売業者を含む)には、製品の製造段階における環境配慮設計やリサイクルに必要な情報提供が責務として求めることとされています。

今後の使用済太陽光パネルの排出状況や処理に実施状況、ならびに技術的・経済的な動向を踏まえ、2030年代後半以降の見込まれる大量廃棄に備えて、より多くの太陽光パネルがリサイクルされるよう、必要に応じて制度の見直しが行われるとされています。
具体的には、使用済太陽光パネルの排出等を行う事業者が取り組むべき事項の段階的強化や事業者の要件の見直しに加えて、将来的には太陽光パネルの幅広い排出者等を対象としたリサイクルの義務付けの検討などが想定されています。
新たな法制度案と並行する形で、既存制度等を活用したリサイクル費用の低減や処理体制の整備に係る措置に加え、環境配慮設計の促進や不適正処理への対応として、既存制度を活用した取組みも整理されています。
リサイクル費用の低減や体制整備に係る措置としては、技術開発支援やリサイクル設備の導入支援など、各種支援制度の活用を進めていく方向性が示されています。
また新たな法制度案では、太陽光パネルの製造業者等に対してこれらの取組みを責務等として位置付けるとともに、実効性を確保する観点から太陽光パネルを資源有効利用促進法に基づく指定再利用促進製品に指定し、判断基準に基づく環境配慮設計等をさらに推進する検討も行われるとされています。
さらに、これまでも議論されてきた不適正処理・不法投棄対策等に関しても、関係行政機関が連携して関連法令の遵守に向けた適切な指導や厳格な対応を進めるとされています。
適正処理の確保に加えて太陽光パネルの適正なリユースを推進するため、『太陽電池モジュールの適正なリユース促進ガイドライン』の改訂も検討されています。
太陽光パネルのリサイクル義務化に向け、リサイクルインフラの構築や制度の実効性を確保しつつ、将来的な義務化の強化や対象範囲の拡大、経済合理性の向上を見据えた新たなリサイクル制度案が示されました。
拡大生産者責任(EPR)が循環型経済(サーキュラーエコノミー)の原則ではあるものの、資源循環システム構築に向けて『今できること』に注力する姿勢が評価され、委員の多くからは新たな制度案に概ね賛意が示されています。
その上で、今後の制度案の詳細を検討する上で、意見や指摘がされています。
太陽光パネルのリサイクル義務化に向けた制度化はこれまで進められてきたものの、費用負担の在り方や他制度との整合性を巡る課題から、制度案の抜本的な見直しが求められてきました。こうした経緯を踏まえ、リサイクル義務化に向けた検討が改めて再開されました。
大きな論点であった費用負担については、『多量の事業用太陽電池廃棄物の排出者等への規制』を軸とする新たな制度案が示され、全国的なリサイクルインフラの構築と経済合理性の確保を通じて、将来的には幅広い排出者等を対象としたリサイクル義務化を目指す方向性が示されました。
今後は、制度案の具体化や運用面の検討が進められることとなりますが、その内容は発電事業者および処理業者の双方に大きな影響を及ぼすものと考えられ、引き続き今後の議論の進展を注視する必要があります。