循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行に伴い、今後広域的な分別収集や再資源化の動きが加速することが見込まれています。こうした社会的要請に対応し、広域的な資源循環ネットワークやリサイクル産業拠点のニーズに対応できる海上輸送拠点の形成に向け、国土交通省では「循環経済拠点港湾(サーキュラーエコノミーポート)の あり方について」がまとめられています。
本とりまとめでは、資源循環を巡る経済・社会環境の変化を背景にこれまでのリサイクルポート政策をさらに深化させる必要性が示されており、今後増加が見込まれる循環資源の港湾での取扱いに関する方向性がまとめられています。
また、今後大量に発生が予測される使用済太陽光パネルに関しても、輸送コストや温室効果ガス排出量削減のため海上輸送の活用も想定されます。
今回のトピックでは、本とりまとめおよび検討会での資料などを基に、サーキュラーエコノミーポートの関する概要を紹介していきます。
脱炭素社会への移行に向けたGX(グリーントランスフォーメーション)の推進、経済安全保障への対応、生物多様性の確保など、資源循環を巡る経済・社会情勢の変化が現在進行形で進んでいます。
政府では、資源自律型の経済である「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への移行に向け、「第五次循環型社会形成推進基本計画」や「循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行加速化パッケージ」の策定など、国家戦略として官民一体で取組んでいます。
サーキュラーエコノミーへの移行が進むことで、動静脈産業における循環資源の流動・種類の増大が想定され、拠点となる港湾における取組みの更なる深化が求められます。
また、物流2024年問題に伴うトラックドライバー不足によって輸送力の低下が懸念される中、循環資源の輸送にも波及することで海上輸送へのモーダルシフトが進む可能性もあります。
加えて、太陽光パネルやリチウムイオン電池、洋上風力発電設備などのカーボンニュートラル分野の循環資源は、今後の増加が見込まれており、国内でのエコシステム構築に向けて港湾の活用が重要な役割を果たすと期待されています。
こうした背景のもと、これまでのリサイクルポート政策をさらに深化させ、物流・産業構造での変化に対応していく必要性から「循環経済拠点港湾(サーキュラーエコノミーポート)のあり方に関する検討会」が開催されました。
本とりまとめでは、港湾を核とする物流システム構築や、広域的な資源循環ネットワーク形成、循環資源の港湾での取扱いの円滑化の必要性などに関して、方向性が示されています。
循環型社会形成推進基本法をはじめとする各種リサイクル関連法や新総合物流施策大綱において、静脈物流システム構築や3Rの推進が求められてきました。
こうした中、広域的な循環資源の流動や全国規模でのリサイクルネットワーク構築のために、静脈物流の拠点となる港湾が「総合静脈物流拠点港(リサイクルポート)」として指定されてきました。
リサイクルポート政策では、港湾を核とした静脈物流ネットワーク構築に向けて、これまで各種の施策が展開されてきました。
また近年では、鉄スクラップ資源の輸出拠点化や港湾における産業副産物の利用促進、災害廃棄物の広域処理など、社会情勢やニーズが変化に対応すべく、リサイクルポート施策の高度化に向けた取組みみ進められています。
これまでリサイクルポートは、港湾を核とする静脈物流システムの役割を担ってきましたが、サーキュラーエコノミーへの移行による循環資源の増加や広域的な分別収集・再資源化の必要性、物流2024年問題による人手不足や脱炭素化の流れへの対応から海上輸送へのモーダルシフトが不可避な状況となっています。
これまで以上に海上輸送の効率化が求められる状況であり、これまでのリサイクルポート政策を基盤としつつ、より一層の機能強化により、これら課題への取組み強化が求められています。
サーキュラーエコノミーへの移行に伴い、広域的な分別収集・再資源化の動きが加速し、循環資源の流動・種類の増大、さらには小口の循環資源の輸送ニーズへの対応が求められています。
こうした動きに対応するためには、広域的な資源循環ネットワークの構築やリサイクル産業の拠点の形成が必要であり、その中核となる港湾として「循環経済拠点港湾(サーキュラーエコノミーポート)」の選定が掲げられています。
また、これまでリサイクルポートが港湾を核とする静脈物流システム構築に貢献してきた経緯から、既存のサーキュラーエコノミーポートに移行し、その機能をさらに深化することが望ましいとされています。
サーキュラーエコノミーポート政策では、以下の施策が求めらています。
国家戦略としてサーキュラーエコノミーへの移行に推進されていることからも、拠点の形成にあたっては国による積極的な後押しが求められています。
また、今後の取組みの進展に応じて、施策内容等の見直しや改善を適切に行っていく必要があることも示されています。
将来的に大量廃棄が予測されている使用済太陽光パネルに関しても、輸送コスト抑制や温室効果ガス排出量削減の観点から、海上輸送が活用も想定されています。
本とりまとめでは、太陽光パネル由来の循環資源についても「サーキュラーエコノミーポート」で取扱いが想定されています。
検討会では、一般社団法人太陽光パネルリユース・リサイクル協会へのヒアリングが実施され、サーキュラーエコノミーポートに関する論点と期待が報告されています。
サーキュラーエコノミーポートの可能性
サーキュラーエコノミーポートに関する論点
循環経済や脱炭素社会への移行が官民一体で推進される中、広域的な分別収集再資源化の動きが加速し、循環資源の流動・種類の増大が見込まれています。
これまで「リサイクルポート」が港湾を核とする静脈物流システムの中核的な役割を担ってきましたが、近年の社会情勢の変化・ニーズへの対応が求められる中、より一層の機能強化を図るべく「サーキュラーエコノミーポート」のあり方が示されています。
大量廃棄が予測されている太陽光パネルについても、「サーキュラーエコノミーポート」での取扱いが進むことも想定されており、今後の国の施策や企業の動向を注視していく必要があります。